アスペクト比について考える

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デジタルカメラ

D7000を買ってから一つ気になっていることがある。それはアスペクト比の違いだ。ご存じのように、フォーサーズ系は4:3のアスペクト比を基本としているのに対し、ニコンをはじめとするAPS-Cフォーマット機は軒並み3:2のアスペクト比を採用している。こうなった歴史的背景を考えてみると、APS-Cおよび135フォーマットは過去のフィルム一眼レフからの資産継承を前提としているため、135フィルムと同じアスペクト比にしたことは容易に推測できる。それに対してフォーサーズというのはもともと過去のしがらみにはとらわれず、デジタル専用フォーマットとして生まれた規格であるから、3:2にこだわる必要はなく、コンデジで一般的であった4:3を採用したという経緯があるのだろう。それはコンデジからの移行をしやすくするという意味もあるだろうし、モニター観賞を前提とした場合に、モニターのアスペクト比と一致するという利点もあったのだろう(当時のモニターは4:3が一般的であったが、現在では16:9が普通になってしまっているが)。


これを紙にプリントする場合で考えてみると、3:2はA4やA3といった一般用紙サイズに無駄なく収まりやすい。正確に言うと、3:2では縦方向に余白が生じ、4:3では横方向に余白が生じるのだが、3:2の方が余白が少なくなるような気がする。さらにA3を長辺方向に拡張したA3ノビというサイズもあるから、この場合は明らかに3:2が最も良くマッチする。雑誌の見開きに無駄なく収まりやすいのも3:2の方だろう。それに対して4:3の場合は6x4.5判と同じアスペクト比だから、六切や四切といった伝統的な写真用紙サイズがぴったりマッチする。それだと135判カメラでは横方向が足りないので、フィルム時代にはワイド六切やワイド四切といった135判専用の用紙サイズも用意されていた。

一方、構図上のセオリーから言えば、3:2は横方向の広がりを感じさせ、4:3は奥行きをより感じさせるという側面があるだろう。被写体によっても異なるのだが、自然風景の場合は上半分に空が入ることが多いので、4:3だとどうも無駄な空間が多いように思えてしまう。一方、人工的な風景では縦方向に余裕が欲しい場合が多く、3:2だとどうしても窮屈な感じがしてしまう。つまり被写体によって一長一短なのだが、どちらがより有利かというと、やっぱり4:3のような気がする。それは縦位置を考えればわかるだろう。縦位置にしたとき、4:3の方が圧倒的に安定感があるのは誰もが認めるところだろう。事実、フォーサーズを使っていると無意識に縦位置で撮ることが多くなるのだ。3:2の縦位置は縦長すぎて、人物の全身像でも撮らない限り、収まりが悪く見えてしまう。

最近はテレビでも何でも横長が席巻しているから、3:2の方が見慣れていると感じる向きもあるだろう。また自分もフィルム時代から135判一眼レフを使っている人間だから、当然3:2の方が慣れ親しんでいるはずなのだ。それでもなお、フォーサーズを長年使っていると4:3の方が収まりが良いと感じるようになってしまっている。D7000を使ってみて一番違和感を感じるのはこれだ。現在、広角側が36mm相当までしかないから、どうしても縦方向が窮屈になるケースが続出している。

動画と違って静止画の場合は画面全体をじっくりと観賞するものだから、奥行きを感じさせるということは重要だと思うのだ。何でもかんでも横長にするのは動画だけで結構。風景写真には6x4.5、6x7、4x5といった正方形寄りのフォーマットが伝統的に用いられてきたことにはそれなりの合理的理由があると思う。もともと135判というのは映画フィルムからの転用ではなかったか? いまD7000を買ってもなおフォーサーズに戻りつつあるのは、6x4.5判と同じフォーマットで撮れることへの魅力である。

ちなみにオリンパスをはじめ、フォーサーズ系のカメラは撮影時にアスペクト比を3:2や1:1に変更することもできる。どういうわけかニコンのカメラは伝統的にこれができない。だからフォーサーズではシーンに応じて3:2と4:3を使い分けてもいいのだが、いちいち変更するのも面倒だし、ただでさえ小さいセンサーをさらに小さくして使うのはセンサーの無駄遣いのような気がしてあまり気が進まない。

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