K-S2は本当に必要か?

投稿日:2015年12月12日 更新日:

デジタルカメラ

今年の1月、K-S2が発表されたときに一目惚れしてしまい、安くなったら絶対買う!と決めていたのだが、冷静になって考えるとK-30からわざわざ買い換えるほどのものか?という気もする。実際、機構のかなりの部分はK-30から流用しているので、バリアングルを除けば大して変わり映えしないはずなんだ。値下がりしたら買わなきゃ損!と言って、いちいち買ってたら結局は金の無駄じゃないか? そこでもう一度K-S2を買う価値があるかを検証してみる。

まずK-30に比べて良くなった点を列挙してみよう。

1. バリアングル液晶がある

これはもう、今までなかったものが付いたのだから絶対的な優位性である。純粋に羨ましいし、異論の余地はない。低アングルで撮るときに腰を屈めなくて済むし、三脚に付けて上向きに撮るときも下から覗き込まなくて済む。しかもチルト液晶と違って縦位置でも使えるところがミソなんだ。ただ注意しないといけないのは、これを使っている時点ですでに一眼レフとしては使っていないということ。当然、AF速度はミラーレスに比べて圧倒的に遅い。ライブビューはあくまでも緊急避難的に使うものであり、常用するものではない。廃校の窓から室内を撮影したいような場合、バリアングルがあると確かに便利だが、同じことはチルト液晶のあるE-PL5でも可能であり、しかもレンズが小さい方がより有利である。したがってバリアングルはあれば便利だが、絶対なければ困るというものでもない。

2. ファインダー倍率が0.95倍になった

K-S2のファインダー倍率はK-30の0.92倍から0.95倍へと向上している。これも大きいに越したことはないから歓迎すべき進化である。ただ以前モニターでK-3を使ったときに思ったんだが、確かに大きいことは大きいんだけど、言われなきゃわからない程度の差。0.92倍と0.95倍の違いなんて、ペンタミラーとペンタプリズムの差ほど劇的なものではなく、しょせん135に比べれば目くそ鼻くそのレベル。よってそれだけのために買い換えるというのはほとんど無意味。

3. ローパスフィルターレス2000万画素センサー

スペック面でK-30との最も大きな違いはセンサーが2000万画素になったことである。ただ自分は高画素信奉者じゃないから、画素が増えたってちっとも嬉しくない。すべてRAWで保存しているから、データ容量が大きくなって迷惑でしかないんだ。高感度耐性はK-3よりも良いと言われており、センサー自体の絶対性能が多少向上している可能性はあるが、それも高画素化で帳消しになるだろう。少なくとも自分にとって2000万画素で良いことは一つもない。またローパスフィルターレスになって解像感は多少向上しているかもしれないが、もともとK-30もローパスフィルターが1枚しかないので、劇的に変わるほどではないだろう。別にどうでもいい話である。むしろモアレを気にしなければならない方が嫌かもしれない。モアレ対策でローパスセレクターブラケットをやるなんて容量の無駄使いじゃないか? 

4. WiFi内蔵

これは自分が最も必要としている機能で、K-S2に買い換えたい理由の一つ。スマホからSNSに投稿するにはスマホのカメラで撮影するしかなかったのだが、そうすると一眼レフとスマホで同じ風景を二度撮らなければならない。これが非常に煩わしかったのだ。それ以前にスマホの画質なんてクソ未満だから、せっかく投稿しても良さがまったく伝わらない。一眼レフで撮影した画像をスマホに転送できれば二度手間が防げ、画質も良くなって一石二鳥である。ところが最近WiFiカードリーダーなるものを買ってしまった。無線でSDカード内の画像をスマホに飛ばすことができる。もちろんカードを挿し替える手間は増えるんだが、同じことは可能だし、こちらの方がどんなカメラにでも使えて汎用性がある。よって、これも必須というわけではなくなったんだ。

5. 内蔵マイクがステレオになり、外部マイク端子が付いた

動画なんてどうでもいいという人が多いかもしれないが、これは自分にとっては結構大きなポイント。K-30はモノラルマイクだし、外部マイクも使えないので音声はどうしようもなかった。動画に凝れば音声はステレオで撮りたいのが当然である。また外部マイク端子があれば電子楽器からの出力を直接ライン録りできるという利点がある。だから外部マイク端子が必要なんだ。しかしよく考えるとPentaxの動画なんてどのくらいの意味があるのだろうか? そもそもAFが追従しない動画なんてあり得ないと思う。動画に関して言えばPanasonicにはとても敵わないし、動画重視ならばG7に行くべきだろう。今までK-30で動画を撮ったことは一度もないし、動画を撮るならE-PL5の方がよっぽどマシ。したがって、これもどうでも良くなっちゃった。

6. AFがSAFOX Xになり、EV-3まで合焦可能になった

K-S2ではAFユニットがK-5II相当になり、暗所での合焦性能が向上したことが謳われている。もちろん良いに越したことはないが、どこまで精度が保証できるのか怪しいものである。そもそもPentaxのAFなんて明るい場所でもまともに合わないんだから(笑)、EV-3まで延びたと言ってもそれにどれほどの意味があるだろうか? それが絶対的な買い換えの理由にはなり得ない。

7. 液晶が3:2になって、エアギャップレス構造になった

K-30の液晶は縦横比がなぜか4:3になっていて、ライブビューにすると上下に余黒が入る。実質的な画面サイズが小さくなるのだから、これが不満の一つだった。そんな意味不明な仕様がまともになったことは望ましい。またエアギャップレス構造になって、屋外での視認性が向上したことも嬉しい。しかしK-30の液晶でも別に見づらいとは思わないし、わざわざ買い換えるほどの理由にはならないなぁ・・

K-30より良くなったと思える点はだいたいそのくらい。まあ一つ一つは大したことじゃないんだけど、これだけ集まると買い換えようかな?という気分にもなる。しかし良いことばかりじゃないんだな、実はK-30より退化している点も結構あるんだ。これは見逃せないと思う点を列挙してみよう。

1. ケーブルレリーズが使えなくなった

K-30ではレリーズ端子のあった場所がK-S2ではマイク端子に置き換わっている。取説も調べたが、レリーズ端子は完全になくなったことがわかった。これって気づいている人が意外と少ないと思うけど、K-S2の最大の欠点だと思う。ケーブルレリーズは三脚使用時に必須のアクセサリーである。自分は三脚大嫌いだからめったに使わないけど、それでも滝の撮影などで年に一度くらいは使う機会がある(笑)。三脚に固定してもシャッターボタンを手で押すとブレの原因になるから、それを防ぐためにケーブルレリーズを使う。もちろんそれがなくても赤外線リモコンやセルフタイマーで代用は可能だ。K-S2ではWiFi内蔵になったので、スマホが代用になると考えて廃止したのかもしれない。でもやっぱりスマートじゃないんだよな。リモコンの受光窓は前面にしかないから、前に手をかざすって何か間抜けでしょ? セルフタイマーを使えばタイムラグは発生するし、よく忘れてシャッターチャンスを逃すこともある。いちいちスマホと接続するなんてめんどくさくてやってられるか!

そして致命的な問題として、フォーカスロックとレリーズロックができないんだ。ケーブルレリーズならシャッターボタンと同じように半押しでAFロックし、全押しでレリーズとなるのだが、赤外線リモコンだとシャッターを切ることだけしかできない。またレリーズロック機能が使えないから、バルブで長時間露光もできない。一応シャッターボタンの二度押しで可能みたいだけど、手で押すとブレる。天体撮影はするなってことか?

自分もこの問題に最近まで気づいていなかった。危うく知らないまま購入してしまうところだった(笑)。この問題だけでK-S2を買う気が半分くらいなくなった。

2. 単三形電池が使えなくなった

単三形電池が使用可能なのはPentaxの伝統だったが、ついにK-S2ではそれが廃止された。コンパクトさを優先したためだろうか? 自分も重くなるのを嫌ってK-30ではほとんど使ってないのだが、エネループを使えばランニングコストが安いし、将来リチウム電池が入手困難になっても単三なら汎用性がある。いざというときの保険として単三形電池が使えなくなったのはやはり大きな退化である。

3. 連写速度が5.5コマ/秒に落ちた

些細な点ではあるが、連写速度はK-30の6コマ/秒から5.5コマ/秒に低下している。またバッファもJPEG撮影時45枚→30枚と大幅に後退している。自分はめったに連写はやらないし、0.5コマの差なんてどうでも良いように思えるが、わざわざスペックを落としてきたということは、どこかでコストダウンが行われたことは容易に想像できる。あまり気分の良いものではない。

4. 構図微調整がなくなった

K-30にはSRを利用して三脚使用時に撮影範囲を微妙に移動させる機能があったが、K-S2ではこれがなくなっている。まあ今まで使ったこともない機能だけど、なぜわざわざ省略したのかが気になる。需要が少ないから廃止したのか、それとも機構的な問題で不可能になったのか? こんなのはソフトウェアだけでできるはずなのに廃止した理由が解せない。セールス上は残しておいた方が得策でしょ?

5. 十字ボタンが押しにくい

これは実機を触ってみればすぐに気づく問題。しかもかなり致命的だ。ボタンがボディーとツライチになってしまったから押しづらいことこの上なし。K-S1もそうだけど、設計者は何を考えているのか?と言いたい。きっと長く使っているうちに一番不快になってくる問題だろう。

6. AF-S/AF-Cの切り替えレバーがなくなった

エプロン部横にあるフォーカスモード切替レバーだが、K-30ではAF-S/AF-C/MFの3つが選べたのに対し、K-S2ではAFとMFしか選べない。AF-SとAF-Cの切り替えはINFO画面から行う必要がある。これも何でわざわざこんな仕様にするのか理解できない。ユーザーモードで登録できるようにするためか? でもやっぱり直接レバーで操作できる方がはるかに便利だと思うぞ。

7. 微妙に重くなった

K-30が本体のみ590gだったのに対し、K-S2では618gと28gの重量増となっている。これはたぶんバリアングルのためと思われる。たかが28gとはいえ、600gを超えると気分的にかなり大きい。エントリー機としては重量級だし、K-3IIとの差は100gもない。それならいっそのことK-3IIという欲も出てくる。

以上、K-S2の短所を洗い出してみたら出るわ出るわ、長所と同じだけ見つかってしまった(笑)。結局、細々とした長所と引き換えに細々とした短所を受け入れるわけで、トータルで見ればプラスマイナスゼロでしかない。画質的にもほとんど変わらないんだから、わざわざK-30から買い換えるほどのものではないと結論付けられるだろう。よっていくら安くなってもK-S2は見送りに決定! どうせ来年中にはK-S2の短所を潰したK-S3?が必ず出るはずでしょ? それまで待っても良いし、K-3IIが大幅に値下がりしたらそっちに行ってもいい。K-30も実質的にまだ1年しか使ってないんだから、買い換えるには早すぎる。もちろんG7も買わないよ。ああ、本当に大人になったもんだと自分に感心している。(笑)

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