OM-4Ti売却とOMシステムの今後

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フィルムカメラ

OM4Ti

奇しくもGM1Sの高感度性能テストをやっていた時に被写体となったOM-4Tiのシャッター故障が発覚してしまった。レバーを巻き上げてもスカスカでシャッターがチャージされないんだ。いつか売って換金しようと思っていたのに、このままじゃジャンク価格でしか売れない。すでに修理ができるのかどうかもわからないが、たとえできたとしても大金をかけて直す価値はない。もう使う可能性はほぼゼロだから、売る以外にないんだ。

そこでとりあえずヤフオクで落札相場をチェック。完動品なら25,000円前後が相場だが、動作不良のジャンクでも外観が良ければ15,000円くらいで売れるようだ。最後のOMだから意外と人気高いのね・・。それなら壊れててもいいから売ってしまおうと思った。どうせ持っていても二度と使うことはないんだから。たとえ15,000円でも目の前に金がぶら下がっていれば食い付くのが貧乏人の性。(爆)


ところが出品直前になって、ちょっと待てよ?と思った。もしかして直るんじゃないか? 使ってて壊れたんならわかるけど、長年放置していて壊れたということは何かの部品が破損したわけではないはず。それを裏付けるように、何十回か巻き上げているうちに一回くらいはシャッターが切れることがあるんだ。ということはシャッターが完全に死んでいるわけじゃない。長年放置していた状況からして油が固まってるんじゃないか?と疑った。こういうことは自転車に乗る人間ならピンと来るんだ。冬場は低温のため油が固着してトラブルを起こすことを経験的に知っている。この時代のカメラもメカの塊だから同じことが起きても不思議ではない。

しかしシャッターの故障となるとボディー内部を全部開けなければならないんじゃないか? さすがにそこまでやると元に戻せる自信はない。そこで困ったときのネット頼み(笑)。「OM-4 シャッター切れない」で検索してみるとちゃんと出てくるんだな。そして巻き上げやシャッターチャージの機構はすべて底板の中に収まっていることがわかった。底板だけならビス4本外すだけで簡単に開けられた。何でも検索してみるもんだねえ・・(笑)

底板を外してみると、歯車やレバーが複雑に絡み合ったメカニズムが姿を現した。この時代のカメラは電子式とはいえ、中身は完全な精密機械だ。複雑すぎて何がどうなっているのかわからないけど、レバーを巻き上げながらどういう仕組みでシャッターがチャージされるのかを探っていく。そしてたまにシャッターが切れることがあるので、その時とどこが違うのかを比較するんだ。するとツルマキバネの付いた一つのストッパーのような部品が目に付いた。本来ならこの部品がカムに食い込んで空回りを防いでいるはずなんだけど、その動きが渋くなっていてちゃんと引っかからないみたいなんだ。見つけたぞ、これだ!

精密ドライバーで触ってみると確かに粘りがあってバネの戻りが悪い。ということはここに注油すればいいはず。こういうときに登場するのがおなじみのクレ5-56。本当はあまり良くないんだけど、自転車のトラブルはこれ一本でたいがい直る(笑)。そこでストッパーの根元にクレ5-56注入!

するとストッパーの動きが実に軽くなって、バネがしっかり戻るようになった。そして何事もなかったかのようにシャッターが息を吹き返したのだ! たったそれだけのことなんだけど、機械式カメラってデリケートなんだね・・。もう一度チェックして全速正常に作動することを確認。超快調だ! これで晴れて「完動品」として出品できることになった。何でもダメモトでやってみるもんだね。危うくジャンク価格で売っちゃうとこだったよ・・(爆)

もちろん、せっかく直ったんだから持っておくという手もあるだろう。しかしここでまた考える。たとえ残したとしても今後使う可能性は限りなく低い。コダックなき後、フジも大幅に値上げと生産縮小を繰り返しており、もはやフィルムは貧乏人の手の届くものではなくなった。経済的に使用不能なのである。今でもフィルムカメラを買い集めているコレクターは多いけれど、彼らとて実際に撮影するわけじゃないんでしょう? 空シャッターを切ったり、撫で撫でしてうっとりするだけなんだろう(笑)。もはやカメラじゃなくて玩具だ。自分のような貧乏人には使いもしないカメラを飼っておく余裕などない。売る以外の選択肢は考えられないんだ。何よりも放置しておいてまた壊れることが一番怖い。動いているうちに早く売ってしまうに限る。

このカメラはOM終了間際に新品で購入したもので、大事に大事に使ってきた「箱入り娘」だ。しかしすでに写真熱が終わりかけている頃に買ったものだから、あまり使われることがなかった不遇のカメラでもある。ちゃんと数えたわけじゃないが、おそらく購入後15年でフィルム30本も撮ってないと思う。ほとんど死蔵に近く、隅々まで眺めても底板以外、キズ一つ見つからない。完動品の機体が少なくなっている現在、しかも超美品となればかなりの高額で落札されることが期待できる。15年というのもちょうど良いタイミングなので、死守してきた箱入り娘を嫁に出すことにしたんだ。

OM-4Tiを売りに出した理由として、もう一つはF3との比較がある。もし一台だけフィルムカメラを残すとすればどちらが良いか? OM-4Tiはマルチスポット測光を搭載していて、確かに機能的には凄いんだけど、触っていて人間の感覚に訴えるものがないんだな。シャッター音、巻き上げの感触、ダイヤルの操作感など、どれをとっても並で平均レベルでしかない。それに比べてF3は触った瞬間にわかる「質の良さ」がある。もしこの世からフィルムがなくなって単なる玩具になったとしたら、どっちが触って楽しいかというと、圧倒的にF3の方である。

それにOM-4Tiはちょっと神経質なところがあって、仕様上はLR44が使えることになっているにもかかわらず、LR44を使うとたまにシャッターがおかしくなることがある。値段の安いLR44を使うとご機嫌斜めなので、高価なSR44を使わざるを得ない。グルメな奴め・・。そんなわけで、このカメラには今ひとつ信頼を置いていなかったんだ。

売り急いだ理由にはもう一つあって、2月16日からヤフオクで落札されたときにピンハネされる手数料(ヤフオク税)が5%から8%に値上げされるという事情がある。しかも3月からは出品に必要なプレミアム会員費まで値上げされる。無料で始めてユーザーを囲い込んでおき、ライバルがいないと見るや有料化、そして値上げ。市場を独占されるとろくなことないね。どうせ消費税が10%になったらまた値上げするんだろ? ソフトバンクのようなクソ企業に儲けさせるのは癪だから、これを最後にヤフオクから撤退することにした。こんなめんどくさいことするくらいなら、たとえ半額になっても中古カメラ屋に売った方が得だ。だからどうしても今月中に出品する必然性があった。

そして1万円スタートで出品したところ、たちまち入札が来た。普通ヤフオクは終了間際まで動かないものだが、この商品に限っては出品直後から入札が相次ぎ、あれよあれよという間に3万を超えた。やはりタマ数が少ないとそうなるのだろう。さすがにその後は静穏状態が続いたが、最終的にはバトルになって36,000円で落札された。OM終了直後のピーク時から比べると3分の1程度だが、それでも現在の相場としては破格値、新品以外では最高クラスの落札額である。やっぱりキズなしの威力は大きい。本当に直して良かった・・

これで無事OM-4Tiを理想的な価格で売却し、泡銭を手にしたわけだが(爆)、問題は残されたOMシステムのレンズ群である。うちにはほぼ単焦点ばかり7本のズイコーレンズを保有している。それもほとんどOM終了間際に買い集めたものだから、どれも新しいんだ。ボディーがなくなればレンズを持っていても意味がないので、当然全部売ってしまうという考えはある。つまりOMシステム完全処分だ。ただ、今この時代のレンズを売っても大した額にはならないだろう。もともと安レンズばっかりだから、全部売ったところでたかが知れている。それに売ってしまうのが惜しくなるほど状態が良い。

OM30
ところがうちにはもう一台OMがあるんだ。これは1985年に購入して写真を始めるきっかけとなったOM30。すべてはここから始まったんだ。このカメラはなぜか調子が良く、30年経った今でも快調に動いている。いくらボロボロでも一番長く使ったカメラだから愛着があって手放せない。これがあるから、もしフィルムを使いたければ手持ちのレンズはすべて活かせる。だからこそ心おきなくOM-4Tiを手放したんだ。ただこのカメラには視度調整が付いていないので、老眼のせいでファインダーが見づらくなったことに後から気づいた。(爆)

まあ実際のところ、フィルムは高すぎて貧乏人には買えないので、冷蔵庫に残っている期限切れネガ6本を使い切ったらもう使うことはないと思う。あと残ったOMレンズはマイクロフォーサーズで遊ぶだけだ。ただm4/3で使ってもほとんど望遠になっちゃうから使い途は少ない。最近は焦点距離を短くするフォーカルレデューサーアダプターなるものも存在するようだけど、どういうわけかOMマウント用がないんだな。それだけマイナーなのか? それならば、将来フルサイズミラーレスかAPS-Cミラーレスを安く手に入れたときのために残しておくかということになる。

いずれにせよ、これでまた一歩K-S2が近づいたことは確かだ。(爆)

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