E-620のノイズとLightroom4によるRAW現像

投稿日:2012年8月15日 更新日:

デジタルカメラ フォトレタッチ


E-620 / ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6 / ISO800

E-520からE-620に乗り換えたとき、「あれっ」と思ったことが一つある。E-520はISO100が基準感度であり、ほとんどISO100で撮っていたのだが、ノイズはまったくと言っていいほど見られなかった。ISO400まで上げると少々気になってくるが、少なくともISO200ではまったく気にならないレベルだった。一方E-620ではISO200が基準感度になったので、ほとんどISO200で撮るようになったのだが、どういうわけかISO200でもシャドウ部にかなり気になるノイズが目立つ。ISO400まで上げるともう使いたくないくらいにノイズまみれになってしまう。これは大いにがっかりした点だ。画素数が少し増えて画素ピッチが狭くなった分、高感度特性が劣化したのかと思ったが、同じISO100で比較するとE-520もE-620も大差はないのだ。どうもE-620の画質はISO100とISO200の間に根本的な差があるように思われる。

その原因は基準感度がISO200になったことと無関係ではないようだ。E-520は白飛びに弱いと言われていたが、E-620になってかなり白飛び耐性が改良された。その手法は撮像素子そのものの改良ではなく、画像処理によるものであることがわかっている。つまり、1段露出アンダーで撮影(ISO200に相当)しておいて、後からシャドウ部を持ち上げるという方法である。これなら見かけ上のダイナミックレンジを広げられるというわけだ。同じ手法は他社のカメラでも広く採用され、基準感度がISO200になったのはそのためである(余談だが、最近のカメラはまたISO100に戻っていることが多い。これは撮像素子自体が白飛びに強くなったためと思われる)。しかし、もともと撮像素子の性能が上がったわけではないのだから、露出アンダーになったシャドウ部を無理やり持ち上げるとノイズが目立ってしまうのは当然である。これがE-620のISO200以上でノイズが目立つ原因と推測される。

ノイズが気になるならISO100で撮ればよいのだが、その代わりに白飛びが目立ってしまう。これはE-520とまったく同じである。もともとISO100は拡張設定という扱いになっており、この場合は白飛び抑制が効かなくなる。輝度差の大きい風景では白飛びが目立つため、撮影できるシーンが限られる。こまめにISO感度を切り替えて使ったこともあるが、結局めんどくさくなってずっとISO200で撮るようになってしまう。これはもう白飛びとのトレードオフで仕方がないものとあきらめていたが、実はRAWで撮って汎用の現像ソフトで現像するとまったく違う結果が得られるということが最近わかった。以下でカメラ生成のJPEG、オリンパスの純正現像ソフトOLYMPUS Viewer2、およびAdobeのLightroom4で現像した結果について比較してみる。


検証はノイズが目立ちやすいISO800で撮影した。比較のため、RAW+JPEGで同時撮影し、まったくデフォルトのままでRAW現像している。


まず、これはカメラ生成のJPEG画像である。ノイズリダクションの設定は「標準」になっている。冒頭の写真の四角で囲った部分を等倍で切り出したものだ。シャドウ部にまだら状のカラーノイズが出るのがわかる。またかなり解像感が失われていて、輪郭も甘くなっている。これはノイズリダクションの弊害によるものだ。


次にこれはOLYMPUS Viewer2でノイズリダクションをOFFにして現像した結果。見ての通り、粒子状のノイズが盛大に出ているのがわかる。ノイズリダクションをかけなければこういう状態なのだ。しかし、輪郭ははっきりしていて解像感は高い。


これはノイズリダクションを「弱」にして現像した場合。OFFと弱の間には大きな差がある。オリンパスのノイズリダクションは弱であってもかなり強めにかける傾向がある。これでも輪郭は若干甘くなっているのがわかる。


これはノイズリダクションを「標準」にして現像した場合。ほぼカメラ生成のJPEGと同じであることがわかる。おそらくノイズリダクションのアルゴリズムが同じだからだろう。


これはノイズリダクションを「強」にして現像した場合。ここまで強くすると、ザラザラ感はなくなる代わりに輪郭がボケボケになって甘い画像になる。しかもその割にはカラーノイズが消えておらず、まだら状の色ムラが目立つ。

ここまでの結果でわかったこと。カメラ生成JPEGもOLYMPUS Viewer2もノイズリダクションのアルゴリズムは同じと思われるが、いずれも単にディテールをボカしているに過ぎないと考えられる。いくらノイズリダクションを強くしてもカラーノイズが消えないからだ。そのため見苦しい色ムラが残ってしまう。ノイズリダクションを強くしてボケボケ画像にするくらいなら、むしろノイズリダクションOFFにした方が輪郭がはっきりしてきれいに見えないだろうか? 粒のはっきりしたノイズは一見フィルム的で、案外気にならないものである。これで少なくとも純正ソフトで現像する限りは、たとえRAWで撮影しても劇的にノイズが改善されるわけではないということがわかった。

次にAdobeのLightroom4を使って現像した場合について検証する。これまでPhotoshop CS4に付属のCamera Rawで現像していたのだが、それでもOLYMPUS Viewer2に比べるとノイズはかなりきれいになることがわかっていた。ところが試しにLightroom4の無料体験版(30日間機能制限なしで試用できる)を使ってみて、あまりのノイズ処理のうまさに驚いた。同じE-620の画像がまるで別物のように見えてしまうくらいだ。


OLYMPUS Viewer2ではノイズリダクションが弱・標準・強の3段階しかないが、Lightroom4は非常に細かく設定することができる。しかもカラーノイズと輝度ノイズを別々に扱えるところがポイントなのだ。まずカラーノイズだけを消してやると、それだけでずいぶんきれいに見える。気になるのはまだら状の色ムラだからだ。後に残るザラザラした輝度ノイズは粒子的でそんなに気にならない。これはちょうどモノクロ写真の銀粒子に近い。次に輝度ノイズのスライダーを少し上げてやるとザラザラノイズもきれいさっぱり消える。ただし、あまり上げすぎると解像感が低下するので、必要最小限にとどめることがポイントだ。少々粒子感が残るくらいがちょうどいいだろう。そうやって現像した結果が次の写真だ。


同じRAWとは思えないほどきれいにカラーノイズが消えている。輝度ノイズのザラザラ感は若干残してあるけれども、解像感はほとんど失われていない。非常に優れたノイズ処理だ。ここでちょっと気づくのは、カメラ内現像やOLYMPUS Viewer2現像と比べて黒の締まりが良くなっているということではないだろうか。このことがノイズ感を減らすことに寄与していると思う。もちろん、これはトーンカーブなどを一切いじらずにノーマル現像した結果だ。それでも黒の締まり具合は微妙に異なる。

ここからは推測になるが、おそらくE-620本体での現像はシャドウ部を持ち上げすぎているのではないかと思う。本来なら黒つぶれすべきところまで無理やり持ち上げているために、余計ノイズが目立ってしまうのだ。これはISO100の画像とISO200の画像で明らかに違うことからもわかる。ISO100の画像ではシャドウがストンと落ちて黒が締まっているのに対し、ISO200の画像は何か黒がモヤモヤして締まりのない感じなのだ。そのことが余計ノイズを目立たせる原因になっている。そこで黒を引き締めてやればもっとノイズ感は減るはずで、Lightroom4現像の方がトーンが素直なのだと思う。ノイズの消し方にしても、カメラ内現像はただディテールをボカしているだけであるが、Lightroom4はノイズの目立つ平坦部で強めにノイズリダクションをかけ、解像感に重要なエッジ部分はできるだけかけないように高度な処理をしているものと思われる。だからこそあまり解像感を失わずにノイズをきれいに消すことが可能なのだ。


これだけでも十分きれいなのだが、よく見るとシャドウ部に若干赤が被っているように見える。ヒストグラムを見ると、確かにレッドがやや浮いているのだ。この赤被りはE-30で顕著に見られると言われているが、E-620でも少し残っている。実はこの赤被りがノイズ感を増大させている原因でもあるので、これを取ってやるとさらにスッキリする。そのためにはトーンカーブの赤チャンネルだけを表示させ、シャドウ側の裾をほんのわずか右へ詰めてやればいい(ここでは1.2%とした)。


これだけでシャドウの赤被りが取れて、さらにスッキリした画像になった。

これまでE-620のISO400以上はノイズが酷くてできれば使いたくないようなレベルだったのだが、これで「普通に使える」レベルになった。若干の解像感低下に目をつぶればISO800も十分実用範囲となる。さらにA4サイズやブログサイズくらいにしか伸ばさないのであれば、ISO1600も射程範囲に入ってくるだろう。

ノイズ処理だけでなく、ハイライトやシャドウの階調補正についてもLightroom4は非常に強力だ。


こちらはISO200で撮影した元画像である。一切の調整を行っていないデフォルト状態だ。こういう輝度差の大きいシーンはデジタルカメラの最も苦手とするところであるが、この場合、手前の建物に露出を合わせると青空は真っ白に飛んでしまう。撮像素子のダイナミックレンジを完全に超えているので仕方がない。だから青空をとるか、建物をとるかでどっちかを犠牲にするしかないのだが、デジタルカメラはハイライト側に弱いので、明るい方の青空を基準に露出を決めるのが鉄則である。一度白飛びしてしまえばどうやっても救いようがないからだ。それに対して、シャドウ側にはずいぶん階調が残っているので、RAW現像でシャドウを持ち上げてやれば十分復活させることが可能である。


Lightroom4では「ハイライト」「シャドウ」というパラメータを操作することにより、他の部分に影響を与えずにハイライト部およびシャドウ部の階調を強力に調整することができる。ここではハイライトを-50にして青空の濃度を上げ、シャドウを+50にして建物の陰になった部分のディテールを持ち上げてみた。


その結果、肉眼で見たイメージに近い自然な描写に仕上がった。デジカメの宿命としてこういうシーンはこれまで泣かされてきただけに、ここまで簡単に修正できるとうれしくなってしまう。


そして素晴らしいことに、ここまでシャドウを持ち上げてもノイズ感はほとんど気にならない。同じことはE-620本体の「階調オート」でも可能なのだが、あれをやるとただでさえ多いノイズがさらに増幅されて見るに耐えない画像になってしまう。だから階調オートは絶対使わないようにしていた。

Lightroom4はノイズ処理もトーン調整も非常に出来が良く、これを持っているだけでカメラの性能を100%引き出すことが可能になる。E-620はJPEGで撮るとあまり冴えないカメラなのだが、RAWで撮ってLightroom4で現像すると見違えるように美しい画像になる。E-620はそれだけのポテンシャルを持っているということだ。これが他メーカーへ乗り換えるのを思いとどまらせた要因である。E-620はまだまだ現役で使えるという認識を得た。よくカメラに投資するより現像ソフトに投資した方が良いという話を聞かされるが、それは真実であると実感した。Lightroom4の定価は16,800円とこの種の現像ソフトの中では廉価であり、他社の現像ソフトあるいはPhotoshopのユーザーなら特別提供版が10,080円で買えるのでさらにお得である。この値段なら買って損はしないはずだ。まずは体験版をダウンロードして、じっくり試用してみることをおすすめする(最初はちょっと取っつきが悪いかもしれないが)。

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