最近購入した書籍の紹介である。近頃の廃墟ブームを反映してか、廃墟に関する単行本や写真集はよく見かけるようになったが、廃校をテーマとしたものは今までなかったのではないだろうか? それで思わず購入してしまった。以前取材した奈良県の丹生小学校が収録されていてうれしくなったことも一因だ。
廃墟の中でも廃校、とりわけ木造校舎は特別な存在である。かつてそこで学んだ者には限りないノスタルジーをもたらし、そうでない者には新鮮な驚きを与える。もともと学校自体が誰もが子供時代を過ごした場所であり、万人を問わず、そこにある備品の一つ一つにもノスタルジーを喚起させられるのである。
この書籍では全国26ヶ所の廃校を取り上げ、写真と文章で綴っている。単一のライターではなく、複数の写真提供者からの情報を集めたものだ。紀行文の形態をとってはいるが、写真の質もなかなか高く、写真集としても楽しめるものである。廃校という空間には独特の寂しさが伴い、いずれ消えてしまう運命にあるはかなさを秘めている。写真からはそんなイメージがよく伝わってくる。
ここで取り上げられた廃校の中にはすでに取り壊されたものもあれば、現状保存して一般公開されているものもある。それぞれに学校の歴史や廃校への経緯について解説が付け加えられており、興味深い。中には名前を伏せられているものもあるが、文中にヒントはたくさんあるので探し当てることも可能だろうと思う。
これでまた行ってみたい廃校が増えた。廃校マニア必見の書である。