G VARIO 12-32mmF3.5-5.6 ASPH. 描写レビュー

投稿日:2016年1月2日 更新日:

レンズ

GM1Sを買った理由にこのレンズが欲しかったからというのがある。何しろ単品で買えば27,000円もするのだから、ボディーはほとんどタダで付いてきたようなもんだ(笑)。キットレンズにしては外装はアルミ、マウントも金属で高級感がある。GM1と同時に発売されたこのレンズは、収納時の長さが24mm、外径が55.5mm、重量はわずか70gと、標準ズームとしては世界最小を謳うものであった。この小ささで手ぶれ補正まで内蔵しているのは驚異としか言いようがない。しかしその後オリンパスから同様のM.ZD 14-42mmF3.5-5.6EZが発売され、薄さでは1.5mmほど負けてしまった。しかもこちらはフォーカスリング付きである。しかし外径と重量では依然LUMIXの方が勝っている。焦点距離域はLUMIXの方が広角寄りで、どちらが良いかは好みによるが、換算24mmから始まるズームは貴重なため自分的にはLUMIXの方に軍配が上がる。そして決定的な違いは描写性能である。M.ZDの方はphotozoneのレビューで相当悪い評価が下されていたので一気に買う気が失せた。特に広角端の周辺画質が壊滅的に悪いようである。一方LUMIXの方は比較的良好な数値を叩き出していたので、俄然こちらに注目が集まったのである。

とはいえ、レンズの描写なんて数値だけで測れるもんじゃないから、自分で試写してみないと実際のところはわからない。天気が悪くてなかなかテストできなかったのだが、一度だけ天気の良い日に試写できたので、従来から持っているM.ZD 14-42mmF3.5-5.6IIとの比較も交えて描写性能をレビューしてみる。

操作性について

M.ZD 14-42mmF3.5-5.6IIも同じく沈胴式なのだが、今となってはさしてコンパクトとも言えず、コンデジとして利用するには無理があった。どうしてもレンズの出っ張りが邪魔でバッグに入らないのである。しかも沈胴機構にロックがあるのが鬱陶しかった。一方G VARIO 12-32mmはロックがなく、シームレスに回すだけで済む。12mmのところにはっきりしたクリックがあるので大変わかりやすい。使い勝手は断然こちらの方が良いはずなのに、なぜ他のメーカーはこの方式を採用しないのだろう?

このレンズはコンパクトさを優先するためにフォーカスリングを省略しており、それを欠点と見る向きも多い。確かに後発のオリンパスはさらに薄型でフォーカスリングを搭載してきたのだから、やろうと思えばできないことはないのだろう。だからと言ってMFが不可能なわけではなく、ボディー側からの操作でMFを行うことは可能である。いったん拡大枠を表示してからコントロールダイヤルでピント合わせを行う。3ステップくらい必要になるが、どのみちMFを行う際は拡大する必要があるのだから、フォーカスリングがあってもなくても手間は大して変わらない。ピーキング機能でピントの合った部分が強調表示されるので、特に苦もなくピントを合わせられる。実際のところMFを使う機会ってそんなに多くないのだから、このくらい割り切っても不自由することはないように思う。なおMFはボディー側が対応していないとできないので、当然のことながらオリンパス機に付けてもMFは使えない。

描写性能

さて本題の描写性能だが、こういうテストはできるだけレンズ本来の描写性を発揮させるため、ボディー側に余計な画像処理をさせないことが肝要である。そこですべてRAWで撮影し、Lightroomの標準条件で現像した。ただ困ったことにLightroom4ではGM1/GM1Sに対応していないんだ。それでAdobe DNG Converterを使ってDNGに変換してから現像した。これをいつもやるのはめんどくさいので、Lightroomをアップデートするか、それともRawTherapeeに乗り換えてしまうか?

以下、焦点距離ごとに絞りを変えて2枚ずつ原寸大画像を掲載する。クリックで等倍表示になるが、巨大画像なので注意。

12mm

20151226_133924
f3.5開放

20151226_133934
f5.6

換算24mmにしては周辺まで大崩れが見られない立派な描写である。普通このくらいの広角になるとどうしても周辺が流れたりするものだが、開放からこれだけ写れば上等だろう。開放の周辺はやや甘いが、中心部の解像度は非常に高く、f5.6まで絞ると周辺まで文句のない描写となる。

開放では周辺光量落ちがかなり見られ、f5.6まで絞ると気にならなくなる。

14mm

20151226_134000
f3.7開放

20151226_134012
f5.6

12mmと概ね同じような傾向。開放から使える画質だが、周辺光量落ちはやや気になる。これもf5.6まで絞れば問題なくなる。後で比較するが、開放画質は明らかにM.ZD 14-42mmF3.5-5.6IIの広角端よりも良い。

18mm

20151226_134109
f4.2開放

20151226_134115
f5.6

18mmから25mmあたりの中間域がこのレンズの最も「美味しいところ」ではないだろうか。開放からまったく問題のない優れた描写力を見せる。周辺光量落ちもおおよそ20mmより長焦点側ではほとんど気にならない。

25mm

20151226_134205
f5.2開放

20151226_134211
f8

開放からまったく問題のない描写である。これに文句を付けるのは神経質というものだろう。f8まで絞るとベストに思える。

32mm

20151226_134252
f5.6開放

20151226_134259
f8

やはり開放から問題のない描写だが、ごく四隅が甘くなったことが確認できる。それはf8まで絞ってもあまり変わらない。しかしこの程度のことは実用上問題になるものではないだろう。

以上、描写性能は概ねphotozoneのレビューと一致していたと思う。焦点距離によるばらつきが少なく、どの焦点距離域においても周辺まで平均点以上の安定した描写力を保っている。特に問題となりやすい広角端でも大きな崩れが見られないのは立派だった。

M.ZD 14-42mmF3.5-5.6IIとの比較

以下、開放画質のみ比較してみよう。それぞれズーム域が異なるので、両方とも重なる焦点域だけを掲載する。なお誤差によって焦点距離が微妙にずれてしまったのがあるが、1mmくらいの違いは気にしないことにする。

20151226_134439
14mm f3.5開放

20151226_134512
17mm f3.8開放

20151226_134557
24mm f4.3開放

20151226_134656
32mm f5開放

まず14mmでは特に左側周辺に甘さが見られ、開放画質はG VARIO 12-32mmよりも落ちる。しかしこのレンズの開放画質はもっと悪いと思っていたので、逆に意外に良いと思ってしまった(笑)。オリンパスのレンズは個体差が大きいと言われ、このような片ボケが発生することはむしろ普通である。

それ以外の焦点距離域では特に手前側が甘くなっていることが気になる。ボケというよりも少しフレアっぽい感じで解像感を下げている。同じ場所にピントを合わせているのにG VARIO 12-32mmではボケてないから被写界深度のせいではないだろう。このレンズは開放で全体にフレアっぽい傾向が見られ、解像度は特に悪くないんだけどコントラストが低下して遠景が眠くなっているのがはっきりわかる。それに対してG VARIO 12-32mmは開放からコントラストが高く、遠景もクッキリとシャープな描写である。

ところで開放f値を比較して気づいた方がいるかもしれない。そう、パナのレンズ全般に言えることだが、両端のf値が同じでも中間のf値は「暗くなるのが早い」のである。これもコンパクト化とのトレードオフかもしれない。G VARIO 12-32mmは実質的には開放f5.6のレンズと思った方が良さそうである。

近接性能

このレンズの最大の欠点と言われるのが「寄れないこと」であるらしい。最短撮影距離は12-20mm域で20cm、21-32mm域では30cmとなる。それだけを見れば一般的な標準ズームと同じレベルだから特に寄れないというわけではない。しかし望遠端の焦点距離が32mmだから、42mmまである標準ズームに比べると目一杯寄ってもどうしても倍率は低くなってしまう。

20151226_142912
32mm端で目一杯寄ってこの程度だ。望遠側の最短距離で写る範囲は概ねハガキ大程度と思ってよい。小さな草花をマクロ的に写すには物足りないが、風景として捉えるには十分な性能だろう。もちろん料理などを写すにも不足はない。

その他作例

20151226_133406
12mm f7.1

20151226_135247
32mm f7.1

20151226_133506
23mm f7.1

20151226_133624
18mm f7.1

20151226_134816
14mm f8

総括

何と言ってもこのレンズの最大の武器はコンパクトさと軽さである。GM1のような小型ボディーに付ければ「準コンデジ」としての役割を十分に果たしてくれる。それでいて手動ズームであるため画角調整がやりやすく、繰り出し操作もストレスがない。

描写性能はズーム全域にわたってばらつきが少なく安定しており、開放から周辺まで使える画質をもたらしてくれる。これもズーム比を欲張らなかったことによる賜物だろう。逆に言えばズバ抜けて良いところはないのだが、すべてが平均点以上。たとえて言えば、秀才ではないが、すべての科目で平均点以上を叩き出す共通一次世代(古い)といったところか?(笑)

そして最大の悩みどころは換算24-64mmというズーム域をどう考えるかだろう。自分的には広角が24mmまである方がうれしいのだが、望遠が64mmしかないことに不満を持つ人も多いだろう。実際、この手のズームは目一杯望遠で使うことが多いので、確かに84mmくらいは欲しかったところ。しかしそれを言っちゃうとこのコンパクトさと描写性能は両立できなかったはずで、割り切って使うしかない。フィルム時代は28-70mmといったズームが一般的だったのだから、それを思うと特に不自由ではないはずである。要は運用方法でカバーすればいいだけの話。

M.ZD 14-42mmF3.5-5.6IIと比べても明らかに良かったので、今後はこちらがメインになってしまいそうである。今ならGM1Sボディー付きで約3万円、むちゃくちゃお買い得ではないだろうか?(笑)

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