旅写真は途中にこそ意味がある

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奄美大島・宇宿 2005年11月 PowerShot S60

過去に撮った写真のストックからネタを拾い出そうとしているのだが、使えそうな写真がまったくと言っていいほどない。それはなぜか?


誰でも旅に出たら写真を撮りたくなるものだが、自分の場合、その撮り方が極端だったのだ。つまり名所旧跡とか絶景ポイントばかりで撮っていて、その「途中」が完全に欠落しているのである。本来、旅というものは家を出てから帰るまですべてが旅のはずである。しかし途中を省略して景勝地の写真ばっかり撮っていれば、それは単なる絵葉書写真に過ぎない。かつてのネイチャー至上主義がそうさせたのだが、極論すれば風景写真など撮る必要はないと言える。景勝地の写真は必ず誰かが撮っているからである。わざわざ自分で撮らなくてもネットを探せばいくらでも出てくるだろう。それよりも自分が旅で体験したことのすべて、たとえば乗り物とか食事とか出会った人とか、そういうものを記録することが誰にも真似のできない「自分だけの旅」の表現になるのである。つまり、旅の写真とは目的地ではなく、その途中にこそ意味があるのだ。自分はそれに気づくのがあまりにも遅すぎた。

現在、1985年頃からの旅の写真が優に数千枚以上はあるが、そのすべてが使えない。特にフィルムで撮っていた頃は徹底していて、「絶景以外は撮らない」という不文律があった。つまらないものを撮るのにフィルムを使うのはもったいないと考えていたからだ。だから撮った写真といえば名所の「超つまらない」写真ばっかりだ。昔はつまらないと思っていた写真こそ、今見ると味わいがある。逆に最も価値のない写真はネイチャーだ。そのつまらないネイチャー写真を必死になって追いかけていたのだから呆れてくる。


奄美大島・古仁屋 2005年11月 PowerShot S60

2003年頃からデジタルカメラを使い始めて、フィルムと併用するようになった。もちろんメインはフィルムで、デジタルは単なるメモだ。その頃からちょっとした合間の写真をコンデジで撮るようになったのだが、一番印象に残っているのはフィルムで撮った絶景ではなく、バスを待っている間にちょっと撮った風景とか、ふらっと入った大衆食堂だったりする。そういった何気ない一コマにこそ旅情を感じるものだが、残念ながらフィルム時代のものはまったくと言ってよいほど残っていない。デジタルカメラを使い始めてからもその傾向はあまり変わらず、やはり「こんなつまらないもの撮ってどうするのか?」と撮る前に自問自答してしまう。だから自分の写真には旅の印象が残らない。

そういうことに気づいて意識的に途中の写真を撮り始めたのはほんの2~3年前のことだから、それより前の写真はまったく公開するに値しない。いま書いていて思い出したのだが、実は以前も同じことをやろうとして頓挫した記憶がある。ことごとく使える写真がなかったのだ。だからすぐネタ切れになった。ストックが何千枚あろうとまったく関係ない。そのすべてが使えない。今になってみればどうでもいいゴミみたいなものだ。一度失敗したことをもう一度やろうとしたのだから学習能力がまったくない。この路線は初めから頓挫している。やはりこういうものは現在進行形でやらないといけないだろう。

ここで載せた2枚の写真は2005年に奄美大島を訪れたときのもの。リバーサルフィルムで3本ほど撮ったと思うが、すべてがどうしようもなくつまらない写真ばっかり。ただ海が写ってるだけとか、木が写ってるだけとか、それだけの写真だ。極論すればどこで撮ったのかもわからない写真だ。今見返しても何の感動も沸いてこない。それよりはちょっとした合間にコンデジでサクッと撮った写真の方に、その時の印象がはっきり残っているものなのだ。

コメント

  1. BigDaddy より:

    私はフィルム時代から何でも撮っていましたから、私とはだぶらないのですが、当時の写真仲間がそのタイプで、絶景しか撮らない。すこしでも納得出来ないとカメラを構えない人でして、酒の席でそんな話題になると、「1日歩いて1枚しか撮れなくてもそれが満足出来る風景ならばそれで本望」、そう言っていましたねぇ。この人、デジタルの今、どうしているのか、気になるところです(笑)。

    昨年ですが、時計のタイマーを利用して、10分に一度、どんな風景でも写真を撮る、そんな遊びじみた事をしていました。使ったのはコンデジで、旅行初日の午前中なんて最初の20枚くらいなんてほとんど車の中からの写真だったりしますが、後で写真を楽しむ分には面白かったです。

  2. オーナー(考え中) より:

    >BigDaddyさん

    ネイチャーやってた頃は、期待通りでなければ一枚もシャッターを切らないなんてことも普通でしたね。
    それでいて同じ被写体をバカみたいに何枚も撮ったり・・(笑)
    あの頃は一本のスリーブを完璧にしなければならない、同じスリーブの中にしょーもない物が紛れ込むこと自体を嫌ってたように思います。
    今から思えばもったいない・・

    写真の楽しみって、予期せぬ物が写っていることじゃないでしょうか。
    これからのネタは当分後悔シリーズが続きそうです・・(苦笑)

  3. kimotoshi より:

    こんにちは。
    そうそう、フィルムだともったいないっていう意識があってなかなかシャッターが切れないですよね(苦笑)
    なのでどうしてもここぞの場面でしか撮らないので枚数は少なくなるし同じような写真が多いし・・・
    今はデジタルとフィルムの2台持ち歩くことが多いのでまあ撮りこぼしは少ないかなと(笑)
    私の場合旅に出たときはブログ用として写真を撮ることが多いです。
    なのでデジタルでいろんな場面を撮るのですがこれが良いかもしれませんね。
    確かにたまに写真を振り返ってみるとその時の場面が出てくるような気がしますよ。
    尤もネイチャー写真の経験がありませんのでSORAさんの撮られた風景写真へは憧れもありますけど(笑)
    撮ったデジタル写真を管理する良いソフトが欲しいです。

  4. オーナー(考え中) より:

    >kimotoshiさん

    フィルムだと「これは撮るべきか?」とか、撮る前に必ず考えちゃうんですよね・・
    ただの看板とか、食べ物をフィルムで撮る人の神経が信じられませんでした。
    その割に、ここぞと思って撮った写真も大したことないんですけど・・(苦笑)

    ブログやってると速報性が要求されるので、だんだんフィルムは使わなくなりました。
    デジカメと両方持ってると、結局デジカメでしか撮らなくなるんですよね・・
    でもこのブログみたいに後出し方式にすればフィルムでもいけると思います。

    LightroomはRAW現像だけでなく、写真管理ソフトでもあるので良いと思いますよ。

  5. […] 自分の写真は使えるものがないということを前の記事で書いたが、それはほとんどがネイチャー写真だからである。ネイチャー写真というのはある意味便利なもので、たとえば自宅の庭 […]

  6. BigDaddy より:

    この話を元にうちのブログでネタを作りたいのですが、宜しいでしょうか?。

    内容的には・・・

    フィルムとデジタルの差、仰る通り、スリーブ36枚の中に無駄なものが入っているとやっぱり私も嫌で、ずっと以前、当時付き合っていた女の子に私も撮ってと言われたけど、リバーサルで撮るなんて冗談じゃない!、と言ってネガ入りのコンパクト取り出したら怒っちゃったとか(笑)、先に書いた友人ネタ、彼と一緒に撮影していると気を使う、彼は1枚も撮らない、私はちょっと立ち止まってはパチリ、その間、彼はずっと待ってくれるんですよねぇ(笑)。

    そんな内容を徒然と・・・。

  7. オーナー(考え中) より:

    >BigDaddyさん

    引用はご自由にどうぞ。
    そういう方がデジタルへ行ったらどうなるのか非常に興味がありますね。(笑)

  8. BigDaddy より:

    ありがとうございます。早速、今夜くらいから書き始めます。今下書き中の記事が幾つかあるので、10月初めくらいのネタになるかと思います。また、文章の引用はなく、ネタ元としてこちらの記事をリンクする事になります事をご了承下さい。

  9. オーナー(考え中) より:

    >BigDaddyさん

    了解しました。
    記事楽しみにしています。