K-S2とK-70はどこが違うのか?

投稿日:2018年5月5日 更新日:

デジタルカメラ

K-S2とK-70の関係はK-30とK-50の関係に似ているが、それに比べるとはるかに相違点が多い。外観こそほとんど違わないんだけど、中身は別物と言ってもいい。中身が同じで外観だけ違ったK-30とK-50とはまるで逆である。K-S2の機能に満足しているならわざわざ買い換える必要もないのだが、少しでも不満を感じているなら買い換えを検討する余地はある。自分も同じようなカメラを買ってどうするのか?と思ったが(笑)、K-S2のあと一歩足りないところがすべて改良されているのだ。「痒いところに手が届いた」とでも言おうか(笑)。だからこそ、その機能に必要性を感じているなら買い換える価値は十分にある。迷っている人のために両者の相違点と使ってみて気づいた違いについて整理してみよう。

外観上の違い

デザインは基本的にK-S2を踏襲しているんだけど、細かい点で異なるところがある。

1. ペンタ部の屋根が丸くなり、中央が少し窪んでいる。
2. ペンタ部と軍艦部の境目が曲線的になった。
3. グリップ横にラバーの膨らみが付けられ、握り心地が向上した。
4. グリップ前部の切り欠きが深くなり、指がかりが良くなった。
5. 十字キーの周囲に膨らみが付けられ、押しやすくなった。
6. モードダイヤルの背が高くなり、回しやすくなった。
7. OKボタンとWi-Fiボタンの周囲にあったLEDランプが省略された。
8. 軍艦部にあったアルミパネルがなくなった。
9. モニターを閉じたときに裏面にあったPENTAXのロゴが省略された。

こうやって見ると、意外と違うところが多いのに気づく。1~2については好みの問題であるが、個人的にはK-S2の方が直線的でかっこ良かったと思う。

3~6については改良点であり、K-70の方が良くなっている。特に5.についてはK-S2で不評だっただけにうれしい改良点だ。というか、それがわかっているならなぜ初めからやらない?と言いたい。

7~9については明らかなコストダウンだ。初期価格を下げた上で機能を増やしたのだから、当然そのしわ寄せがどこかに来る。まあLEDランプは蛇足みたいなものだから別にあってもなくても良いが、8~9はあからさまなコストダウンであり、全体に高級感が下がった気がする。

K-70で進化したポイント

1. センサーが2000万画素→2400万画素になった。
2. リアルレゾリューションが搭載された。
3. 最高感度がISO102400に引き上げられた。
4. 手ぶれ補正が3.5段分→4.5段分に強化された。
5. 像面位相差素子でライブビュー時のAFが高速化された。
6. 連写速度が5.5コマ/秒→6コマ/秒に引き上げられた。
7. RAWの記録階調が12bit→14bitに引き上げられた。
8. リモートケーブルが使えるようになった。
9. 動画撮影時にAFが追従するようになった。
10. 動画のフレームレートが60iに対応した。
11. ユーザーモードが2個→3個に増えた。
12. Wi-Fiボタンの機能をカスタマイズできるようになった。
13. アウトドアモニター/赤色表示が可能になった。
14. バルブタイマーが搭載された。
15. エクストラシャープネスが搭載された。
16. 肌色補正が搭載された。

K-S2から進化した点は非常に多い。もちろんその全てが必要なものではないし、正直どうでもいい機能もある。そこに魅力を感じないのであればわざわざ買い換える必要もない。

個人的に重視したのは4.および8~10である。とりわけK-S2の最大の欠点であったリモートケーブルが使えない問題を解消したのは大きい。それと手ぶれ補正が強化されたのもうれしい改良点だ。この2点だけでも買い換えに値すると思う。それに加えて自分は動画を重視するので、ようやく世間並みにAFが追従するようになったことは大きい。この3点があればもう買い換えは決定的だ。

それ以外、2400万画素化はうれしくない進化だし、目玉のリアルレゾリューションも三脚必須だから有り難みはない。最高感度が倍になったといっても、どうせISO12800以上は使い物にならないのだからどうでもいい話だ。確かにスペック上の数値が少し良くなっただけで、別にどうでもいい項目は多い。しかし一つ一つは微妙な差であっても、これだけ数が揃うとやはり魅力を感じてしまうのだ。ドラスティックな進化ではなく、地味なスペックアップを積み重ねることで買替え需要を喚起しようとする。それがPentaxの戦略なのか?(笑)

K-70で退化したポイント

K-S2から比べると進化しかないように思えるK-70だが、実は退化したポイントが2つだけある。

1. Wi-Fi接続時のNFCが廃止された。
2. Wi-Fiボタンを自分撮りシャッターボタンとして使えなくなった。

まあ自分はどっちも使わないからどうでもいいんだけど、1.などは明らかにコストダウンだろう。それだけでデバイスが一つ減らせる。2.はおそらくLEDランプが省略されたことと関連しているだろう。それよりは一等地にあるWi-Fiボタンを別の機能に割り当てられるようになったことがうれしい。

K-70を使ってみて気づいたこと

K-S2は入れ違いに売ったので詳細な比較テストはしてないのだが、旅行中に使ったり家の中で簡単に撮り比べをしていくつかのことがわかった。

高感度性能が向上した

K-70では最高感度がISO102400まで引き上げられているが、それはアクセラレーターユニットの搭載によって「ノイズのごまかし方」が上手くなっただけだけだろうと思っていた。つまりJPEGだけの話でRAWには恩恵がないものと考えていた。ところがRAWレベルで比較してみても高感度ノイズには明らかな差異が見られた。K-S2に比べて1段とまでは行かないが、確実に半段は高感度耐性が向上していることが確認できた。ISO6400も何とか許容できるレベルだと思う。画素数が増えているにもかかわらず高感度特性が向上したのは意外な発見だった。

手ぶれ補正が強力になった

手ぶれ補正がスペック的には3.5段→4.5段に向上しているが、実際はどうなのか? 特にボディー内補正では望遠側で弱くなる傾向にあり、K-S2ではせいぜい2段分しかないのでは?と思っていた。そこで18-135WRの望遠端(換算200mm)でテストしてみると、手ぶれ限界の1/200秒から3段分遅い1/25秒でも確実に止まることを確認できた。これがK-S2だと4割くらいはブレる。やはり1段分は向上していると見て良いだろう。200mmが1/25秒で手持ちできるならばフィルム時代には考えられなかったことで、これは純粋にうれしい進化である。

評価測光が馬鹿になった

これは大きな不満点。測光素子はK-S2と同じものを使っているはずなのだが、アルゴリズムが変わっているようで明らかに馬鹿になった。K-S2ではほぼ出た目で適正露出だったのだが、K-70では必ず1/3段オーバーになる。つまり基準露出が1/3段オーバーになったと思っていいだろう。だから常に1/3段マイナス補正しなければならない。Pentaxは基準露出の調整ができないんだよな(Olympusはできる)。自分はK-30の時代から電源を切るたびに露出補正をリセットする設定にしていたのだが、K-70ではこれを解除して露出補正を記憶する設定にしないといけない。でもそれはそれで事故の原因になり得るから不快である。

ハイライト補正が常時効いている

Pentaxのハイライト補正はRAWでも有効なので、今までは常にAUTOの設定にしていた。ハイライト補正とISO感度を共にAUTOにしておくと、基本的にはISO100で撮影されるが、逆光などで明暗差が大きい場合のみ自動的にISO200に上がってハイライト補正が効くようになる。つまり1段アンダーで撮影してシャドウを持ち上げる処理が自動で行われるわけだ。

K-S2の場合は通常はISO100で撮影され、明暗差が大きい場合のみISO200に上がった。これが本来あるべき動作だ。ところがK-70ではどんな風景を撮っても必ずISO200で撮影される。普通は絶対にハイライト補正が必要ないようなド順光であっても必ずISO200に上がってしまうのだ。これには最初面食らった。妙にシャッタースピードが速いと思ったら勝手にISO200に上がっているのだった。逆にISO100になるのはレンズをアスファルトに向けたときくらいで(笑)、そのような状況はまずあり得ない。つまりハイライト補正が常に効きっぱなしの状態になっているのだ。これではAUTOの意味がない。マイクロフォーサーズと同じように、実質的にISO200が基準感度になってしまっている。自分はこれが嫌だったからハイライト補正をOFFにした。

動作音が静かになった

K-S2ではシーッという感じの動作音(おそらくジャイロの作動音だろう)が常に聞こえているのが気になった。それ自体は別に気にするほどのものでもないんだけど、動画を撮るとこの音がノイズとして録音されてしまうんだ。実はPentaxの動画は画質は最悪なくせに音質は驚くほど良い(笑)。音楽録音にも使えるくらいのクォリティーだ。しかしこのノイズが全てを台無しにしてしまっていた。

K-70ではこの動作音がほとんど聞こえないことに気づいた。実際には耳を近づけるとかすかに聞こえているのだが、K-S2に比べると非常に小さい。そのため動画撮影時のノイズがほとんどなくなり、極めて高音質で録音できるようになった。

ライブビューAFの速さはほとんど変わらない

K-70では像面位相差素子を初めて採用し、ライブビュー時のAFを高速化したことを謳っているが、実際には体感できるほど速くない気がする。確かに初動の迷いは少なくなったが、一発でスパッと決まるわけではなく、やはりジーコジーコと往復する動作は変わらない。K-S2と比べると気持ち速くなったかな?という程度で、言われなければわからないくらいの差と言っても良く、これにはあまり期待しない方が良い。

まとめ

K-S2からK-70への進化は想像以上に大きく、実質的にK-3IIを凌駕したと言っても良い。一つ一つの進化は大したことはないが、全体として見ればK-S2からスペックが底上げされている。Pentaxには珍しく欠点の少ない優等生的なカメラであり、「理想のカメラ」に限りなく近い存在だと言える。現行のAPS-Cエントリー機の中では間違いなくコスパ最高の優良機であるからPentaxブランドの将来性さえ気にしなければイチオシの機種である。

数少ない欠点は上にも述べた露出関係のみ。これだけはK-S2の方が優れている。これなどは完全にソフトウェアの問題であるから、将来のファームアップで改善されることを期待している。そのためには文句を言い続けなければならないのだろうが・・

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