オリンパスのフォーサーズやマイクロフォーサーズ機の良いところは、ボディー側に手ぶれ補正機構を内蔵しているため、どんなレンズであろうと手ぶれ補正が効くことだ。普通手ぶれ補正機構が付かないような広角レンズはもちろん、マウントアダプターを介したオールドレンズであっても同様に機能するのは他社にはない美点。レンズ側に手ぶれ補正機構を入れるのはレンズが大きくなったり、コストが高くなる問題があり、どうしても無駄に思えてしまう。自分はボディー内補正が圧倒的に合理的だと考えている。だからどうしてもオリンパスやペンタックスに興味を持つ傾向がある。
常に手ぶれ補正が効くのだから、三脚を使用する場合を除いて常時手ぶれ補正オンにしておけば良さそうなものなのだが、実はここに思わぬ落とし穴がある。これはオリンパスユーザーの間ではかなり知られている事実なのだが、E-620やE-PL1などの手ぶれ補正には誤動作があり、特定の条件下でかえってブレを拡大するという現象が確認されている。しかし、その問題はE-PL2以降のモデルでは改良されているという情報があるので、本当かどうか確かめるためE-620との比較実験を行ってみた。
この現象はシャッター速度が1/125~1/60秒のときに最も起こりやすいことがわかっており、しかも普通はブレにくい広角レンズの方が起こりやすい。確率としては5枚に1枚くらいの割合で発生する。困ったことに、曇天時にISO200で撮影すると、f8まで絞ったときにたいがいこのシャッタースピードになってしまうのだ。だから手ぶれ補正をオフにしないと、原因不明なブレに泣かされることになる。
そこで実験はシャッター速度優先モードで1/125秒に固定し、最も広角側の28mm相当で同じシーンを50枚撮影することによって行った。普通ならまずブレないような条件である。そしてブレが確認されるカットの数を比較した。その結果は次の通り。
E-620: 8/50枚
E-PL2: 4/50枚
E-620の場合、5枚に1枚の割合で発生するという確率はほぼ当たっている。しかも明らかにブレているとわかるケースが多く、ひどいのは5ピクセルくらいのズレが認められる。こちらは光学ファインダー撮影だから、本来ならE-PL2よりブレにくいはず。一方、E-PL2の方は確率的には半分になっただけのように見えるが、その現象はE-620とは性格が異なる。E-PL2の場合はブレているといってもせいぜい1~2ピクセル程度にとどまり、等倍で何となくピントが甘く見えるという程度である。もしかすると単なるピンボケかもしれないし、本当に手ぶれしていて補正し切れていないだけなのかもしれない。その辺のところは判然としないが、明らかにE-620とは性格が異なる。もともと手ぶれ補正は完璧ではないのだから、誤差の範囲内とも言える。
以上の結果より、E-PL2以降のモデルで手ぶれ補正機構の誤動作問題が改良されたというのは事実のようである。E-620では通常手ぶれ補正をオフにしておき、望遠撮影や1/30秒以下のスローシャッター時のみオンにするという切り替えが必要であったが、E-PL2ではその必要はなさそうだ。ブレるかどうかは確率の問題であり、手ぶれ補正があったとしても完璧ではない。だから常時手ぶれ補正オンで、少なくとも2枚撮っておけばOKと考えられる。一番大事なのはとにかくしっかり構えることだ。
この現象が起こるようになったのは、手ぶれ補正の駆動機構が超音波モーターからステッピングモーターに変わったことと関係していると言われている。ステッピングモーターは超音波モーターほど高速で精度良く制御できないことが原因かもしれない。フォーサーズのE-3やE-5、E-30、E-520には超音波モーター式の手ぶれ補正機構が搭載されており、これは誤動作を起こすことがなかった。以前E-520を所有していたのだが、確かにそういう問題はなかったし、非常に強力に効いた。300mm相当で1/30秒なんて無茶な条件でも10枚中8枚は成功するくらいの恐るべき威力があった。ステッピングモーターに置き換えられたのは、主に小型化と省電力化が目的であるが、どういうわけか同じユニットを採用するE-P2ではこの現象は起こらないらしい。むろんE-PL1とE-PL2でも同じはずなのだが、どこが改良されたのかはよくわからない。もしかするとソフトウェア的な問題なのか?
また広角レンズほど発生しやすいという現象は、ブレの拡大率と関係があると考えられる。撮像面で同じブレ量を発生させるためには、広角レンズほど大きく振る必要がある。つまり手ぶれが微少であれば撮像面でのブレ量は1ピクセルに達するか達しないかのごくわずかの量となる。しかしステッピングモーターではそこまで精密な制御が難しいため、必要以上に行き過ぎたりしてしまうのではないかと推測される。ただそうだとしても、機種によって挙動が異なるのは疑問として残る。
このようにE-620の手ぶれ補正機構はカメラマン側に使いこなしを要求するのであるが、もちろん弱点を知った上で使えば無いよりはあった方がはるかにマシである。フォーサーズはもともと高感度に弱いので、あまりISO感度を上げたくはないが、手ぶれ補正のおかげで広角レンズなら1/4秒くらいまで何とか手持ちでブレずに撮ることができる。もちろん体をどこかに固定するなどの工夫は必要だ。ただE-520に比べると手ぶれ補正の効きは弱い。300mm相当で1/125秒でも等倍ではたいがいブレている。実質1段程度の効果と思った方が無難かもしれない。E-620は良くできたカメラだけに、その点だけは残念だ。
コメント
Pentax K-7でも同じような問題がありました。やっぱり1/125secなんですよ(笑)。5枚に1枚って事はありませんが、自宅で写真を見直すと、おやっ?、って写真は幾つかありますねぇ。当初はピンボケなのかブレなのか判りませんでした。K-5ではあまり騒がれていないので、改良された可能性もありますが、所詮ブレ補正は仰る通り、完璧ではない、カメラマンはそれを認識する必要があるのでしょう。
OlympusとPentaxでは同じボディ内補正でも方法は異なるらしいのですが、同じような傾向があるみたいですね。ただ、Pentax曰く、レンズ内補正のカメラと確率的は同じとの事でした。広角側で起こりやすいと言うのも、恐らく本文の検証の通りかと。
それを考えると、むやみに高画素化するのもなんだかなぁと。どうしても等倍でチェックしちゃうので、ちょっとしたブレでも「カメラがおかしい!」とクレーム付けたくなりますもん(笑)。
>BigDaddyさん
ペンタックスにも同様の問題が存在することは知っていました。
どうもオリンパスとペンタックスは変な不具合が多いところが似ていますね。(笑)
高画素化すればするほどブレはもちろん、レンズのアラも目立ちやすくなりますから、ユーザーの要求がよりシビアになって、メーカーは自分の首を絞めることになるだけだと思うのですが・・(笑)
早くそのことに気づいてバカバカしい高画素化競争に終止符を打ってほしいです。