2015年4月 K-30 / SIGMA 17-50mmF2.8EX DC
いよいよ和歌山県屈指の大物廃校の登場である(笑)。今回の最大の目的はここを訪れることだった。実は昨年の同じ時期にこの場所を通っているのだが、情報を知らなくて素通りしてしまった。この廃校は多くの廃墟系サイトでフィーチャーされており、これは絶対見ておかなければと思った。よってそのリベンジである。
旧日置川町(現白浜町)の大瀬地区にある大瀬小学校は昭和45年に市鹿野小学校への統合に伴い、閉校となった。ここは紀伊半島の最深部に位置し、どこから入るにせよ非常に不便な場所である。まさに秘境中の秘境。県道221号の市鹿野から林道将軍川線へ入るルートが最もアプローチしやすいが、それでも林道は道が悪く、とても時間がかかる。
この廃校はGoogleの航空写真でも存在を確認することができるが、市鹿野から来ると大瀬の集落の手前、道路が大きくカーブする地点にある。学校は道路より一段低い場所にあるため、車からはまったく見えない。上の看板が目印なのだが、GPSを搭載していなければこれだけで見つけることは難しいだろう。それにしても、廃校跡にわざわざ看板を立てるようなことは珍しいと思うのだが・・
その看板のある場所から、鬱蒼とした杉林の中の細道を100メートルほど歩く。いくつかの廃屋を見送った後、校舎が見えてくる。
最初に迎えてくれるのがこの校舎。講堂として使われていたようだ。
講堂前には立派な校歌碑が建っている。創立百周年を待たずに閉校になってしまったようだ。並んで大瀬小学校跡の石柱も建っている。やはりここは観光地扱いなのか?
校庭から見た一般教室校舎の全景。平屋の木造校舎が草ボウボウの校庭に映える。すでに傾き始めているのもわかるだろう。
講堂の中に入ってみる。窓はほとんど割れてボロボロだ。天井も至るところで落ちている。
一般教室への入口。扉はすべて開放されていて「どうぞお入り下さい」状態だが(笑)、もちろん安全が保証されているわけではないので行動は慎重に・・
一番手前の部屋は応接室。入った途端、コウモリがバタバタと飛び立った。苦手な人は絶対無理!(笑)
卒業生と思われる方の書き込みがいくつかある。何と60年ぶりとか36年ぶりと書いてある! 一様に感謝の気持ちが述べられていて胸に来るものがある。変わり果てた母校を見てどんな気持ちになるのだろうか・・
途中の道にあった廃屋は教職員の宿舎と思われる。中はボロボロに崩れ落ちて完全な廃墟状態であった。
憧れの廃校を訪れることができて感無量であった。大瀬集落には現在数戸の民家が残っているが、今でも人が住んでいるのかどうかわからない。人里から遠く離れ、まったく人の気配もない完全なる静寂が包み込む。ここは昭和45年のまま時間が止まってしまった異次元の空間。その場所に自分一人しかいないという状況はこの上なく贅沢に思える。いつまでも眺めていたいと思うような素晴らしい空間であった。
人里離れた場所に隠れるように建っているわけだから、今後も取り壊されることなく、このまま静かに朽ちていくのだろう。まだかろうじて建っているが、いつ崩壊してもおかしくない。いずれこの雄姿を見られなくなる日が来るかもしれない。