東海道関宿 2012年8月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II
フォーサーズの後釜をめぐって、ニコンだ、ペンタックスだと散々逡巡を繰り返したわけであるが、最終的にはあわてて購入する必要もないかという結論に落ち着いた。今のE-620で別に困ってないし、もっと待てばさらに魅力的な機種が出てくるのは当然だからだ。極論すれば、フォーサーズが本当に終了する「その時」までは新しいカメラは必要ない、そう考えるにも至った。それで一度は落ち着いたかに思えたのだが、どこで魔が差したのか、まったく予期しないところで半ば衝動的にポチッと行ってしまったのである。(爆)
先に結論から言ってしまおう。今回購入したものはオリンパス PEN E-PL2である。衝動的にポチってしまった最大の要因は、価格の安さだった。これが決め手と言ってもよい。購入価格は14-42mmF3.5-5.6II付きのレンズキットで何と28,800円。これなら量販店におけるコンデジ主力機の店頭価格と変わらない。一時は26,000円台まで下がっていたが、迷っている間に少し値上がりしてしまった。しかし、もう流通在庫も残り少なくなり、これ以上待つと値上がりする一方なのは確実だ。これが最終的に背中を押した原因である。実際、その数日後には価格.comの最低価格が31,000円台まで上昇してしまっていた。発売当初は8万円前後もしていたものだから、約6割もの値下がり率は異常とも言える。このところのデジタルカメラのデフレぶりはすさまじいものがある。この価格なら買わなければ損という気分になってもおかしくない。1/2.3インチほどの小さなセンサーを積んだコンデジと、4/3インチの大型センサーを搭載したマイクロフォーサーズ機が同価格というのはちょっと信じられないような話だ。もちろんセンサーの大きさから言うと、画質はコンデジと雲泥の差がある。E-620のときから、僕は14-42mmのズーム一本で95%の写真は撮れる。望遠はめったに使わない。したがってキットズーム付けっぱなしで「でかいコンデジ」と考えれば、これほどお得な買い物はない。最近はキヤノンのG1XやソニーのRX100のように大型センサーを搭載したコンデジも登場してきたが、まだまだ高価格である。方やE-PL2ならそれらと同等以上の大型センサーを持ち、しかもレンズ交換までできるのだから、驚異的なコストパフォーマンスの高さなのだ。
次に数あるマイクロフォーサーズ機の中でなぜE-PL2を選んだのか?という話に移ろう。まずオリンパスかパナソニックかという大きな選択肢があるが、性能から言うとマイクロフォーサーズ登場当初からパナソニックが一歩リードしている感があり、特にAFスピードなどはオリンパスが常に後塵を拝してきた。操作性についてもパナ機の方がユーザーフレンドリーで使いやすいと思う。しかしパナ機の最大の欠点は手ぶれ補正をボディー側に内蔵していないことである。もちろん望遠系の純正レンズにはすべて手ぶれ補正が搭載されているし、広角系ではもともとぶれにくいことからなくても困らないのであるが、自分は手持ちのOMレンズやニコンFマウントレンズを使ってマウントアダプター遊びをしたいこともあり、やはり手ぶれ補正がボディー側に内蔵されている方が好都合だ。最近はパナソニックのGX1もかなり価格がこなれてきたし、新型の1600万画素センサーであるから高感度画質なども改良されているものと思われるが、手ぶれ補正がないことだけがどうにも引っかかる。またマイクロフォーサーズ専用のレンズは所有していないので、最低一本は購入しなければならないが、GX1のレンズキットだと48,000円前後となり、コストパフォーマンスが悪い。この価格だとニコンのD5100レンズキットへ行こうかという気分にもなってしまう。というわけで、まずパナソニックは候補から外したのであった。
オリンパスの場合、最高峰は言うまでもなくOM-D E-M5であるが、レンズキットで10万円を超える価格はコストパフォーマンスが悪すぎて論外といえる。フォーサーズ離れした高感度特性は魅力的ではあるが、あの値段では手も足も出ない。正直言って、E-M5に10万円出すくらいなら、ペンタックスのK-5とDA17-70mmF4の組み合わせを買った方がよほど幸せになれると思う。一方、PENシリーズで現在最も完成度の高い機種はE-P3であり、これには異論の余地がない。E-P1やE-P2の頃は上位機でありながら、後発のPEN Liteシリーズに性能面で追い越されてしまっている部分があり、上位機の面目丸つぶれであったが、E-P3においては名実ともに最上位機種であることに違いない。第3世代になってようやくラインナップがまともになってきたということか? しかしE-P3もまだまだ価格が高く、コストパフォーマンスが悪い。現在の価格ならあえてマイクロフォーサーズという選択をせず、やはり他社の一眼レフへ乗り換える方が賢明に思える。
では下位機種のE-PL3はどうか? これもセンサーや画像処理エンジンはE-P3と同じものであり、画質的には同等と思ってよいだろう。一応、最高感度がISO12800までになり、E-PL2比で高感度画質が改良され、ファインディテール処理で解像感が向上したことが謳われている。しかし、良い面ばかりではないのだ。むしろE-PL2より退化している面が多いように思う。一つはデザイン。薄さを強調するあまり、グリップが省略され、レンズマウント部分だけが飛び出したデザインになってしまった。あれはカッコ悪いし、ホールディング性も悪い。モノには何でも程良い大きさというものがあると思う。闇雲に小さくすればいいってもんじゃない。小さくした弊害として持ちにくくなり、操作性が悪化するなら本末転倒だ。E-PL2はマイクロフォーサーズ機としては大柄な部類に入るが、むしろこのくらいの大きさの方が持ちやすく、安定感があってブレにくいと思う。自分はフォーサーズ用のでかいレンズも使う予定なので、このくらい大きい方がレンズとのバランスも良い。これはパナ機やソニーのNEXシリーズにも言えることだが、ボディーの高さをマウント径ギリギリにしたり、逆にボディーからはみ出すようなデザインは好きでない。いかにもスペック優先で小型化した感を拭えない。その点、E-PL2はマウント上部に余裕があって美しく見える。E-PL3ですっかりイメージチェンジしてしまったが、E-PL2はE-P2の流れを汲むオーソドックスなカメラらしいスタイルに好感が持てる。趣味の道具としてのカメラには、長く使っても飽きの来ないデザインというのも重要な要素なのだ。さらにE-PL3ではストロボがなぜか外付けになっているが、あれも意味不明だ。内蔵ストロボは「内蔵」されているからこそ有用なのであって、わざわざ外付けするなら意味がない。ボディーが少しくらい大きくなってもいいから、ストロボくらい初めから内蔵しておけと言いたい。
E-PL2と比べた場合、E-PL3で最悪なのは背面液晶である。フォーサーズのアスペクト比が4:3を基本にしているにもかかわらず、なぜか液晶は横長の16:9なのだ。これは動画を意識してのことと思われるが、もしかするとボディーの高さを低くするためにあえて横長にしたのだろうか? この場合、4:3のアスペクト比で撮影すると画面の左右に大きな余黒ができてしまい、実際のモニター画面はずいぶん小さくなってしまう。せっかく3インチ液晶を採用した意味がない。しかももっと酷いことに、液晶が横長になったしわ寄せとして、右手側のボタンやダイヤル類がずいぶん窮屈なレイアウトになってしまった。実際店頭でも触ってみたのだが、操作部が右端に寄りすぎているし、ダイヤルを回すと指が液晶モニターの縁に干渉してとても回しづらい(E-PL3はチルト式モニターなので背面からやや出っ張っている)。どうやったらこんな最悪なデザインを思いつくのか理解不能である。さらに右手側のスペースが狭くなった分、再生ボタンや削除ボタンが左手側に移動され、拡大ボタンとFnボタンが上側に移動されてしまった。E-PL2では右手だけでほぼ全ての操作ができるのに対し、これは改悪でしかない。E-PL2に対するE-PL3の優位性と言えば、高速化されたAFとTruePic VIによる高画質化が主なものであるが、E-PL2でもE-P1あたりの初期モデルに比べれば十分高速化されており、通常の撮影においてまったく不自由を感じることはない。画質的な面では新しい画像処理エンジンによって高感度特性が向上したと言われているが、それはJPEGで撮った場合の話だ。単に「ノイズの消し方」がうまくなったに過ぎない。もともと同じスペックの1200万画素センサーを採用しているのだから、RAWで撮って現像してしまえば画質は基本的に同じである。それに比べてデザインと操作性におけるマイナス面の方がはるかに大きい。現在の実勢価格から考えてもE-PL3はコストパフォーマンスが悪いが、もし価格が同じであったとしても、自分ならE-PL2を選ぶ。
というわけで、コスト的な問題でE-M5とE-P3を除けば、E-PL2は現行のオリンパスのマイクロフォーサーズ機の中で最も完成度が高く、コストパフォーマンスの良い機種なのだ。それでいてレンズ付きで3万円を切る価格は魅力的すぎる。先に述べたように、当面レンズを追加する予定もないから、「でかいコンデジ」と思えば十分納得できる価格である。そしてマイクロフォーサーズ機ならE-620との棲み分けも可能と考えた。僕は登山やサイクリングなどにE-620を持って行くことがあるのだが、はっきり言って邪魔でしょうがない。いくら小型軽量とはいえ、一眼レフはやはりでかい。それでコンデジで済ますケースも多いのだが、めったに行けないような場所になるとコンデジでは画質的に後悔が残る。そういうときにコンパクトなマイクロフォーサーズ機があれば画質に妥協することなく携帯性を優先することが可能になる。もちろん気合いを入れてじっくり撮りたいときや、望遠系レンズを使いたいときはE-620を使えばよいのだ。画質に大きな差がないというのもメリットだ。これがもし他社の一眼レフに乗り換えてしまったら、そういうわけには行かないだろう。結局新しいカメラしか使わなくなるか、あるいは携帯性を優先したいときだけE-620を持ち出す選択しかないと思う。ありがたいことに、マイクロフォーサーズ機では専用のマウントアダプターを介してフォーサーズのレンズを利用することもできる(AFが遅くなるという問題はあるが)。だから当面レンズに困ることはないし、たとえフォーサーズが終了したとしても手持ちのレンズは無駄にならない。ということは、この期に及んでフォーサーズのレンズに心おきなく投資することもできてしまう。これは思わぬ副産物ではないか。あとちょっとセコい話だが、E-620とE-PL2ではバッテリーを共有できるという点も見逃せない。E-620はBLS-1、E-PL2は新型のBLS-5を採用しているものの、相互に互換性があるため使い回しが可能なのだ(充電器はそれぞれ異なる)。ミラーレス機はバッテリー消費が大きいため、予備バッテリーは必須である。サードパーティー製の安いバッテリーを大量に購入して、相互に使い回せるというのは実に経済的だ。これも大いに背中を押した。
以上長々と書いてしまったが、E-620の後継としてマイクロフォーサーズのE-PL2を購入する意志がこれで固まったのである。巡りに巡ってオリンパスに戻ってきた(笑)。今のところE-620のリプレースではなく、サブシステムという位置付けだが、将来的にレンズが揃ってくればこちらがメインになる可能性もある。もちろん万が一フォーサーズの新製品が出るようなことがあれば、再びフォーサーズ復帰という可能性もあるし、今からフォーサーズのレンズに投資しても双方で使い回せるというのはありがたい。何だかんだ言ってオリンパスからはなかなか離れられないのである。それがオリバカというものだ。(笑)
まだ購入して日が浅いのだが、もう少し使い込んだらE-PL2のインプレッションを書いてみたいと思う。