旧熊野川町立畝畑小学校

投稿日:2015年6月16日 更新日:

廃校/廃村

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2015年4月 K-30 / SIGMA 17-50mmF2.8EX DC

この日の5件目、紀伊半島シリーズの最終である。先の七川小学校松根分校から長い峠道を越え、旧熊野川町(現新宮市)に入った。そして最初に出会う集落が畝畑(うねはた)なのだが、わずかな民家があるものの今も人が住んでいるのかどうかわからない。かつては筏などを使って材木を下流へ運び生計を立てていたと言われるが、林道が開通してトラック輸送に取って代わられ、皮肉にも住民がいなくなってしまったという歴史を持つ。

その畝畑地区にあった畝畑小学校は昭和51年に休校となり、平成5年に廃校となっている。

とにかく今となってもここへたどり着くのは容易なことではない。古座川町側から来ると距離は長いものの、まだ道はマシであった。ところが小口側から来ると素堀のトンネルや落石、ガードレールのない断崖絶壁など恐怖を感じる道が延々と続く。距離的にはやや短いものの相当な難路なので覚悟が必要だ。

そして現地に着いてからも廃校を見つけ出すことはきわめて難しい。これほどわかりにくい廃校は初めてだ。航空写真で見ると山の中にかろうじて存在を確認できる。例によってストリートビューで下見はしていたのだが、どう見てもアプローチするルートを見つけることはできなかった。それもそのはず、ちょっとあり得ないような場所に存在していたのだ。

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畝畑の集落を過ぎてゆっくりと走ってみたが、やはり入口らしきところを見つけることはできなかった。そこで近くに車を停めて歩いて探した。すると道路脇に怪しげな石垣を発見したのである。枯れ枝に埋もれてほとんど見えないが、何か階段らしきものが見える。長年廃校探索をやってると動物的直感とでも言おうか(笑)、この道は学校につながっているに違いないとわかるんだ。そしてこの階段から続くジグザグ道を登り始めた。周りは鬱蒼とした林の中、ちょっとした山登りである。普通、こんな場所に学校があるはずないよな? でも登るにつれてそれは確信に変わった。校庭の端らしい水平な石垣がちらっと見えたのである。

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ここまで来ればもう確実だ。いやが上にも期待が高まる。

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そしてこの校門に出迎えられる。ちゃんと表札も残っているのがうれしい。この門は俗世界から隔離された異次元への入口に思えた。この中ではすべてが昭和51年のまま時間が止まっているんだ。

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最初に目に入ったのは校舎ではなく、3棟ほどある廃屋群である。

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これらは教職員の宿舎だったのだろう。

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校舎より傷みは激しく、完全に廃墟と化している。

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その廃屋から一段低い場所に見える建物が校舎である。植物に埋もれてその全容を見ることさえできない。

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校舎の正面へ下りた。

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外観はどう見ても廃墟である。

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この扉は一応開くが、建て付けが悪いのでここからは入らない。

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朽ち果てた滑り台。本物の廃墟だけが持つ凄味である。

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校舎のさらに奥に離れとして建っていたのが調理室。

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大きな釜や流し台が見える。最盛期には60~70人の児童がいたというから、教職員も含めて結構な量の給食を作っていたのだろう。

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調理室とつながる部分の入口は開放されていて簡単に入れる。廊下に入ったところからの眺め。外観のひどさとは裏腹に、内部は意外なほどしっかりしている。

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一番手前は一般教室だろうか。黒板や机が残っていて学校そのものである。

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スチールじゃない木の机は相当古いものだろう。

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休校後しばらくは使われていたのだろうか? 昭和59年の書き込みがある。しかし30年前の書き込みがそのまま残っているなんて凄い。

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これが図書室の中。社会科の掛地図などが置いてある。天井からコウモリがぶら下がっているのがわかるだろうか? 入ったらバタバタと飛び回るけれども、廃校には付き物だから気にしちゃいけない(笑)。写真では明るく見えるが、実際には相当暗い。とてもじゃないがフラッシュを焚かないと撮影は無理。

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(フラッシュ撮影)

図書館の中には意外なほどきれいな状態でたくさんの本が残っている。あの外観から想像することができるだろうか?

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(フラッシュ撮影)

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これが職員室の中。

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(フラッシュ撮影)

なぜか番傘が置いてある。何に使ったのだろうか?

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(フラッシュ撮影)

人体解剖図とラケット。昭和40年の日付がある。

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ここが校舎の一番手前側、つまり外から見えていた部分。昭和41年以前と書かれた飛び箱が置いてある。

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お約束のトイレ(笑)。同じく校舎の一番手前側にある。珍しく校舎内にあるし、少し近代的な感じがする。

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トイレ内にある手洗い場。

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トイレ前から入ってきた方の廊下を振り返る。

1時間あまり夢中で撮影を続けた。これほど美味しい物件はめったにない(笑)。なにせ外観はどう見ても廃墟なんだけど、中はまさに学校そのものなんだ。備品も意外なほどきれいな状態で残っている。これは間違いなく大瀬小学校、某M小学校と並んで和歌山県の廃校ビッグ3と言えるだろう。

とにかくこの立地自体も凄い。他に平らな場所がなかったのだろうか、何でわざわざこんな山の中に学校を建てるのか理解できない。しかもここへは自動車が入れる道は一本もなく、徒歩でしか到達することができないんだ。とすると、いったいどうやって建設資材を運んだのだろうかと謎が深まる。

ここは完全に外界から遮断されており、目的を持って訪れたマニア以外、決して足を踏み入れることのない場所である。今ここにいるのは自分しかいないという孤独感を存分に味わえる。それだけに万一何かあったら誰にも発見されない可能性がある(笑)。携帯電話も全く通じない。それなりの覚悟は持って行動すべきである。

これで4月の紀伊半島シリーズはすべて終了した。しかし、その後また廃校を開拓してしまったので、まだまだ終わらない。(爆)

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紀伊半島の廃校 第1巻 紀伊半島の廃校 第2巻 紀伊半島の廃校 第3巻

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