K-3 / smc DAL 18-55mmF3.5-5.6AL
※リコーイメージングのモニターキャンペーンでお借りしているK-3を使用してレビュー記事を書いている。同じくモニターに当選された「So What? ~ 写真生活」のBigDaddy氏も新たなレビュー記事「Pentax K-3 レビュー その7 K-3レビューだけとK-5+DA18-135mmを再検証」をアップされたので参考にされたい。
K-3に初めて搭載されたローパスセレクターは間違いなく売りの一つである。K-3の発表を初めて見たとき、手ぶれ補正機構をローパスフィルター代わりに利用するという発想の斬新さに驚いたものだ。本来なら解像感を低下させるローパスフィルターなどない方が良いのだが、被写体によってはモアレが発生してしまうことがあり、そのための保険としてはローパスセレクターが有効に作用すると考えられる。
モアレが最も発生しやすい被写体といえばトタンの壁だ。普段は気にも留めていなくても、町中を歩けば至るところにある。こういうのは写真を撮ってみて初めて「ああ、モアレが発生しているな」と気づくのであり、撮影時にいちいちそんなことを考えながら撮っている人間はいないだろう。
しかし意図的にモアレを発生させようとすると、これが意外と難しい。モアレが発生するのはトタンのパターンとセンサーのピッチが特別な関係になったときだけであって、ちょっと撮影距離を変えたり画角を変えたりするだけで発生したりしなかったりする。しかも現場で背面液晶を見ながら確認することが大変難しいのだ。実はモアレが見えるかどうかはモニターのピッチにも関係している。等倍で見てモアレがなくても、縮小するとモアレが見えることがあるが、それはトタンのパターンとモニターのドットピッチがほぼ近付いたときに起こる。だから背面液晶でモアレが出ているかを確認することは不可能に近いのだ。さらに言えば、モニターでモアレが見えていてもプリントすると見えなくなる可能性もあり得る。一般的にプリンターのドットはモニターほど境界が明瞭ではないから、モアレは起こりにくいと言えるだろう。
というわけで、こういうテストをやろうとすると、とりあえず撮ってみてPCで見てからモアレが出ているかどうかを判断するしかない。そこでモアレが出そうなトタン壁の小屋を撮って実験してみたのだが、残念ながらモアレは出なかった。よく見るとわずかにモアレが出ているようなのだが、黒っぽい壁だから背景に紛れてしまってほとんどわからない。そこでローパスセレクターがどのくらい効くのかを検証することはあきらめた。そこまでやろうとすると、こんな短いモニター期間ではとても足りない。
それじゃ仕方ないので、発想を変えてローパスセレクターを有効にした場合にどのくらい解像感が落ちるのかを検証してみた。それが事前にわかっていれば、「この風景はモアレが出そうだな」と思ったときには予防的にローパスセレクターを効かせることができるだろう。
トップの写真と同じものをローパスセレクターのON, TYPE1, TYPE2で比較してみた。中央付近を切り出した等倍画像を以下に示す(クリックで拡大)。現像はLightroomで行っているが、解像感を強調しすぎないようにシャープネスはデフォルトの25としている。
ぱっと見た限りでは目くじら立てて言うほど解像感には差がないように思える。ただ仔細に見れば、やはりOFF>TYPE1>TYPE2の順で切れが良いのがわかる。本当に言われなければわからないレベル。まあその程度の差だ。
まあ自然風景では99パーセント必要ないと思うが、下町風景をよく撮る人や、商品撮影などでモアレが絶対許されないような場合には初めからローパスセレクターを有効にしておけばよいと思う。現場で確認することは不可能に近いのだから、そうするしかない。それと引き替えに失う解像感はごくわずかのものだ。もともとローパスフィルターがないのだから、ローパスフィルター付きと同等になっただけのことである。そんなのよっぽど大伸ばしにしなければわかるもんじゃない。