手ぶれ補正はセンサーシフト式に限る!

投稿日:2015年3月2日 更新日:

デジタルカメラ

レンズ交換式デジタルカメラが庶民の手に渡り出した頃から議論の的になっているのが、手ぶれ補正はレンズシフト式かセンサーシフト式かどっちが優秀か?という問題。今までの論調からすると、どっちも一長一短があり引き分けとするのが習わしであった。それはメーカーによって方式が決まっており、どのメーカーの肩も持ちたくないというメディア側の事情とも無関係ではないだろう。しかし技術は常に進歩している。今やレンズシフト式に勝ち目はなく、センサーシフト式が絶対的に優位であるとするのが自分の結論である。

歴史的に言えば、古くからあるのはレンズシフト式の方である。フィルム時代の末期にはすでにCanonがIS内蔵型レンズを発売しており、それに続いてNikonもVRで対抗した。フィルムの場合、撮像面は動かせないのだから当然レンズシフト式しかあり得ない。一方でセンサーシフト式の方は、初めて搭載されたのは自分の記憶が合っている限り、MinoltaのDiMAGE A1ではなかったかと思う。このカメラは一眼レフじゃないんだけど、実は今でも持っている。Minoltaがカメラ事業から撤退した後はSONYのαに引き継がれ、OLYMPUSもフォーサーズのE-510に初めてセンサーシフト式手ぶれ補正を搭載した。つまり、センサーシフト式というのは媒体がフィルムから撮像素子に置き換わったことによって初めて可能になった方式であり、デジタルならではの方式といえる。

それぞれの方式の長所・短所について一般的に言われることは、おおよそこんなことであろう。

【レンズシフト式の長所】
・ファインダー像が常に安定している
・レンズごとに最適化されているので補正効果が大きい

【センサーシフト式の長所】
・どんなレンズでも有効である
・補正光学系を必要としないので光学性能に影響を与えず、小型軽量にできる

【レンズシフト式の短所】
・手ぶれ補正を内蔵したレンズ以外では使えない
・補正光学系を必要とするのでレンズが大型になり、高価になる
・補正光学系が光学性能に悪影響を及ぼす可能性がある

【センサーシフト式の短所】
・露出の瞬間だけ作用するのでファインダー像が安定しない
・レンズシフト式に比べると補正効果が弱い

おそらく、量販店の店員に聞けば今でも同じことを言うであろう。しかし、これはかなり古い話だ。こんなものを今でも信じている店員は相当古いと言わねばなるまい。

まずセンサーシフト式の短所とされたファインダー像へのリアルタイム補正だが、OLYMPUSのE-M5ではすでに実現されている。しかもレンズシフト式に比べて効果が弱いどころか、さらに強力だとするのがもっぱらの評判である。つまり、技術の進歩によってセンサーシフト式の弱点とされたものはすべて克服され、もはや短所など存在しないのである。

一方でレンズシフト式はどうか? まず当たり前の話だが、手ぶれ補正を内蔵したレンズでしか使えないのが最大の欠点。大まかに言って標準レンズより焦点距離の短いレンズには不要として搭載されないのが普通だが、それで本当に良いのか? どんな広角レンズだって1/8秒以下の低速シャッターを切れば確実にブレる。廃校の暗がりの中でそんな状況は普通にあるが、いちいち三脚を使えというのか? 自分は三脚大嫌い人間だからまっぴら御免である。

だいたいすべてのレンズに手ぶれ補正機構を組み込むなんて無駄以外の何物でもない。そのせいでレンズは大きくなるし、価格も高くなる。そして見逃せないのが光学性能への影響だ。レンズシフト式の原理は補正光学系を動かして光軸を曲げることによっているが、それが光学性能に影響を与えないとは言い切れない。レンズのテストをやっていると、よく片側だけが極端に悪い片ボケ現象を見ることがあるが、これもレンズの光軸が偏っていることに起因するのだろう。だから手ぶれ補正で光軸をわざと曲げたりすれば片ボケが出ても不思議ではない。そこまで酷くなくてもレンズの最高性能を発揮できないことは確かだろう。

それとレンズシフト式では原理的に上下ブレと左右ブレの2方向しか補正できないことも大きな欠点。ブレにはそれ以外にもレンズの光軸回転ブレや接写時に問題となる平行移動ブレというものもあるが、レンズシフト式ではこれらに対処する術はない。OLYMPUSの5軸手ぶれ補正ではそのすべてに対応しているんだから凄いじゃないか。

要するに、自分に言わせればレンズシフト式には短所しか存在せず、センサーシフト式には長所しか存在しないんだ。だから誰が何と言おうとセンサーシフト式の圧倒的勝利! 自分がPENTAXとOLYMPUSを愛する理由はそこにある。

そのことをより確信させたのが、E-M5 MarkIIに搭載された4000万画素ハイレゾショットである。センサーを0.5ピクセル単位で動かして複数回撮影し、デジタル合成することによって超高解像度の画像を生み出すというものである。撮影に時間がかかることから静止物にしか使えず、三脚が必須という制約はあるが、フォーサーズセンサーでNikon D810を上回る解像度を実現したのだから技術としては大変面白い。ただ個人的な意見としては、どうせやるなら解像度を上げるよりもRGBを合成することによって疑似Foveon化し、ピクセル単位での解像を目指した方が有用だったのではないかと思う。それが残念だ。と思ったら、どうやらPENTAXが次期135センサー機で疑似Foveonを搭載するという噂である。

だからセンサーシフト式は手ぶれ補正にとどまらず、さまざまな応用範囲が広がる可能性を秘めているのだ。たとえばPENTAXではSR機構を自動水平補正や構図微調整に利用しているし、K-3でローパスセレクターに応用したことは記憶に新しい。またアストロトレーサーで星の追尾もできるし、センサーのクリーニングにさえ利用している(効果のほどは疑問だが)。そして小型軽量ながらも視野率100%ファインダーを実現できているのも、SR機構を利用して位置決めの微調整を可能としたからである。センサーシフト式はアイディア次第でいくらでも可能性が広がるんだ。

それに比べてレンズシフト式は手ぶれ補正という一つの機能以外のことは何もできない。技術的にもこれ以上進歩する余地は小さく、せいぜい補正の段数が増える程度である。レンズシフト式というのは枯れた技術であり、もはやフィルム時代の遺物でしかないのだ。

だから自分がNikonユーザーになれなかった理由はそこにある。手持ちのレンズはすべてフィルム時代のものだから、手ぶれ補正は一切使えなかった。ありえない。同様にマイクロフォーサーズでもレンズシフト式のPanasonicは好きになれない。

ここまでセンサーシフト式の優位性が明らかになってくると、おそらくNikonやCanonも内心羨ましく思っているのではないかと思う。5軸手ぶれ補正やハイレゾショットはどうやってもレンズシフト式ではできないんだから、指をくわえて見ているしかないんだ。今でもNikonやCanonは決まったように、ファインダー像が安定するとか、レンズごとに最適化されているので効果が高いとか、レンズシフト式のメリットを強調しているが、それにどれほどの説得力があると言うのだろう? 自分にはもう強がりにしか聞こえないんだ。

PanasonicがGX7でついにセンサーシフト式を採用したように、きっとNikonやCanonもレンズシフト式の負けを認め、こそっとセンサーシフト式に移行してくるに違いないと読んでいる。

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