電子水準器の功罪

投稿日:2016年1月11日 更新日:

デジタルカメラ

最近のデジタルカメラには電子水準器が内蔵されていることがもはや当たり前になってきた。といっても全てのカメラに内蔵されているわけでもなく、概ね中級機以上にしか搭載されていないことが普通のようだ。たとえばニコンではD7200クラス以上とD5500クラス以下で分かれる。この辺がニコンの嫌らしい差別化であり、電子水準器が欲しければ嫌でも中級機以上を買え!ということになる。

その点ペンタックスは良心的で、K-30クラスのエントリー機にも電子水準器が内蔵されている。自分にとってはK-30が初めての電子水準器内蔵カメラとなった。それは自分が心から欲していたものでもある。なぜ電子水準器が欲しいのかと言えば、自分には必ず写真が傾くクセがあるからだ。真っ直ぐに撮ったつもりでも後から見ると必ず傾いている。それが気になって仕方がない。水平線とか電柱とか基準になるものがあればまだいいんだけど、山の稜線なんかはどこを基準にしていいのかわからず、実際より傾斜が急に見えたり緩く見えたり、現実を写しているのかわからなくなってしまう。

だから電子水準器はとてもありがたい機能なんだ。当然K-30では常時ファインダー内に表示させている。一度使ったらもう手放せない。そして慣れとは恐ろしいもので、電子水準器がないと不安になってしまうんだ。今度買ったGM1Sには電子水準器が内蔵されているんだけど、E-PL5には内蔵されていない。それだけでE-PL5がダメなカメラに思えてしまう。E-PL5とE-PL6はほとんど変わらないんだけど、一番大きな違いはE-PL6には電子水準器が内蔵されているということ。それが羨ましくて、今E-PL6がむちゃくちゃ安くなってるから買い換えてやろうかと思っちゃうほど。(爆)

それほどまでに自分は電子水準器に依存しきっている。ところが良いことばっかりじゃないんだ。これの弊害というものが無視できなくなってきた。まず第一に、撮影にとても時間がかかるということである。使ったことがある人はわかるだろうけど、電子水準器は結構敏感に反応するので、完全に水平を出すにはシビアなカメラ保持が要求される。三脚使用ならまだいいけど、手持ちで水平を保つのはなかなかしんどい作業だ。それなのに少しでもずれていると気になってシャッターを押せない。結果的にシャッターを切るまでにずいぶん時間がかかり、神経をすり減らすことになる。

それだけじゃなく、本来水平を気にしなくていいようなシーンでも水平出しをしないと気が済まなくなるんだ。たとえば、頭の上にある紅葉を撮るときなんか、別にカメラの向きはどうでも良いわけでしょう? 写真を見たって傾いていることは絶対にわからないんだから・・。そもそもカメラを45度以上傾けると電子水準器も効かなくなるから水平の出しようがないんだ。それは頭ではわかってるんだけど、それでも律儀にまず水平の状態で左右の傾きを直し、そのままカメラを上に振るという無駄な操作をやってしまう。まったく無意味とわかっててもこの「儀式」をやらないと気が済まなくなるんだ。こうなるともう病的であり、「電子水準器依存症候群」とでも言えるのではないか?

そしてもう一つ厄介な問題は、電子水準器に気を取られすぎて、他のことが疎かになってしまうんだ。ファインダーの隅々まで目を配る余裕がなくなって余計なものが写っちゃったり、シャッタースピードを確認し忘れてブレブレだったり、勝手にISO感度が上がっていてISO1600で撮っちゃったり(笑)。もう水平出しばかりに神経をすり減らして、写真で一番肝心な構図やシャッターチャンスが二の次になっちゃうんだよね・・

本来ありがたいはずの電子水準器が、それに頼るばかりに写真を撮るのがとてもしんどくなってしまった。もう便利なんだか不便なんだかわからない。フィルム時代はもちろん電子水準器なんてなかったけど、それで何の不自由もなく撮っていた。もちろん写真が傾くことはあったけど、失敗は失敗として次から注意しようと反省もできる。三脚を使うときは雲台に付属している気泡式の水準器で水平出しをしていた。それで十分だったんだ。手持ち撮影でまでカメラに「傾いてるぞ」と言われるのは、もはやありがた迷惑でしかないのではないか?

結局、電子水準器なんて使わない方が精神衛生上良いのではないか? 最近そう思えてきた。事実、水平出しに気を取られているうちにシャッターチャンスを逃したことは一度や二度じゃないんだ。それよりは傾いててもチャンスをものにした方が勝ちでしょ? 今は多少小さくなることに目をつぶれば後から修正は可能なんだから・・

電子水準器にしろ手ぶれ補正にせよ、フィルム時代はなくても不自由しなかったものが、一度手にしてしまうとそれがないと不安でたまらなくなる。そして写真にとって一番肝心なものを見失ってしまう。これを堕落と呼ぶ。

-デジタルカメラ

Copyright© DEJA VU ~いつか見た光景~ , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.