K-3 / smc DAL 18-55mmF3.5-5.6AL
リコーイメージングのモニターキャンペーンで借りているK-3の貸出期間が終了し、本日返却した。あれもこれもと思っていても、結局全部できなかった気がする。せめて1ヶ月はないと厳しい。そもそも時期が悪い。おそらく年末年始の休暇を挟んで気を利かせたつもりなのだろうが、この時期は何も撮るものがない。もう少し早く紅葉の季節だったなら単なるテストにとどまらず、本格的に実戦投入を楽しめたであろう。それにこの季節は天気が非常に悪い。冬型特有の鉛色の雲が広がり、晴れた日がほとんどない。たまに日が差しても、晴れたり曇ったりで光量が安定しない。こういうテスト的なことをやろうとすると、光量が安定しないのが一番困るのだ。
とブツブツ文句を言っても仕方がないのだが、束の間の晴れ間を狙って出撃したお散歩写真をネタにグチグチ言ってみる。今回は18-135mmを持って行かず、K-30ダブルズームキットの18-55mmと55-300mmだけを持って歩いた。というのも18-55mmの描写性能をよりシビアなK-3で今一度確かめておきたかったからである。
なお同じくモニターに当選された「So What? ~ 写真生活」のBigDaddy氏も新たなレビュー記事「Pentax K-3 レビュー その5 微ブレとフィーリング」をアップされたので参考にされたい。
まず冒頭の写真だが、この大きさで見れば全体にピントが合っているように見えるだろう。21mmでf8まで絞っているから、普通ならパンフォーカスになってしかるべき条件だ。ピントを合わせているのは手前にある石碑で、距離は5m以上は離れていたと思う。フィルム時代の常識から言えば、手前側にピントを合わせてf11程度まで絞れば奥までパンフォーカスになるはずである。しかし等倍で見るとこのレンズ特有の像面湾曲が顕著に表れている。
まずこれは中央付近の等倍切り出し画像だが(クリックで拡大)、当然ながらピントは合っている。厳密に言えばボケているにせよ、これだけ解像していれば十分被写界深度の範囲内である。
ところが右端の部分を切り出してみると、見事にボケているのだ。これは被写界深度から外れたわけじゃない。もしそうなら当然中央もボケるはずである。しかし周辺だけがボケるということは、やはり像面湾曲の影響なのだ。
結論として、このレンズの使いこなしはなかなか難しい。この写真のように、フィルム時代の癖でつい手前側にピントを合わせたくなるのだが、このレンズに限っては絶対にやっちゃいけない。むしろ後ろ側にピントを合わせるのが正解。そうすれば周辺までシャープな写真になる。ただAF任せにすると、このくらいの距離ならどっちもピントが合っているとみなされて不本意に手前に行ってしまうことがある。だからMFで「ほぼ無限遠」に合わせるのが一番確実。フォーカスリングをいっぱいまで回すと無限遠を通り越してしまうようなので微調整が難しいのだが、このレンズは幸いにしてズーミングによるピント移動がほとんどないので、望遠側で無限遠に合わせてから広角側に戻しても良い。
あるいはAF前提ならAF微調整で後ピンに調整してもいいのだが、中央の測距点で合わせると相当後ピンにしないといけないので、当然近距離では逆にピントが後ろに行ってしまう。したがってこの方法は好ましくない。どうしてもAFでやりたければ周辺の測距点を使ってピント合わせするしかないだろう。もちろん周辺に合わせると今度は中央がボケる恐れもあり、さじ加減はなかなか難しい。
18-135mmも同様に周辺の流れが見られるのだが、これは18-55mmとはちょっと傾向が異なるように思う。少なくとも中央にピントを合わせれば周辺が極端にボケることはない。そしてf8まで絞るとある程度改善される。ということは像面湾曲以外の問題なのだろう。ところが18-55mmは絞れば絞るほど悪くなり、まったく改善されない。やはり像面湾曲の影響としか考えられない。そしてf11まで絞ると中央も含めて確実に甘くなる。f8でもすでに甘い。むしろ開放が最も解像力が高いと思われる。したがって18-55mmはできるだけ絞らずに使うのが性能を引き出すコツ。やはり使いこなしの難しいレンズだ。
次にBigDaddy氏のレビューで初めて気づいたのだが、ハイライト補正というものを使ってみた。これまでハイライト補正があることは知っていたのだが、ISO200以上でないと使えないことが気になってOFFにしていた。どうせRAWで撮るのだから後から補正すればよいと考えていたからだ。ところが実はこれはRAWにも効果がある。最低感度をISO200にしてダイナミックレンジを稼ぐ手法はマイクロフォーサーズなどでも取られてきたが、ISO感度が自動的に上がるというところがポイントである。つまりISO感度が上がるということはセンサーからの信号をデジタルデータに変換する手前でアナログ的に処理されていることを意味し、当然RAWデータにも影響する。それを知ってハイライト補正は常にAUTOにするようにした。AUTOにするとカメラが輝度差を検出して自動的にハイライト補正をONにしてくれる。ISO AUTOを100~1600にしていると、明るい場所でもISO200になったときはハイライト補正が効いていることがわかる。ただISO160以下に固定しているとハイライト補正が有効にならないのはBigDaddy氏が指摘している通り。
こういう極端な明暗差があると、もはや写真ではどうにもならない状況だが、普通に撮れば背景はほとんど白く飛んでしまう。
同じ状況でハイライト補正をAUTOにすると自動的にISO200に上がり、ハイライト補正が作動した。上の写真では見えなかった遠方の山や雲がうっすらと見えるようになったのがわかるだろう。わずかな差に見えるかもしれないが、このくらいハイライトが残ってくれればRAW現像でほぼ回復できる。
実はK-30にも同じくハイライト補正のAUTOがあって、これまで使っていなかったのだが、これからは常時AUTOにしようと思う。デジタルカメラで最も不快なのはハイライトの白飛びであり、それが少しでも改善されるなら非常にありがたい機能である。ちなみにシャドー補正の方はデジタルデータに変換した後で処理されるので、RAWデータには影響を及ぼさない。
55-300mmも少しだけ使ってみたが、K-3で使っても十分な性能を発揮してくれた。あとは単なる作例ということで・・(笑)
K-3 / smc DAL 18-55mmF3.5-5.6AL
K-3 / smc DAL 18-55mmF3.5-5.6AL