【要約】K-30/K-50における絞り制御機構不良に関する調査

投稿日:2017年2月3日 更新日:

デジタルカメラ

以前コメントしていただいた方からの情報によると、Pentax Forum(海外サイト)の以下の記事でK-30やK-50における絞り制御機構の不良問題について、ユーザーにアンケート調査を行った結果が示されている。

Pentax Aperture Block Failure Survey Results

これらの機種のユーザーには非常に興味深い内容なので、和訳して要旨をまとめてみた。重要でない部分は割愛しているので完全な翻訳ではない。なおグラフ類は添付していないので元記事を参照していただきたい。

記事の要約

最近、フォーラムにおいてペンタックスK-30およびK-50のユーザーがカメラの絞り制御機構の不具合を報告する投稿が増加しているため、この問題の広がりを調査する目的でアンケートを行った。K-30、K-50、K-500、K-S1、K-S2、あるいはK-70を所有していることを表明した約5000人のフォーラムメンバーに、調査依頼を電子メールで送信した。

回答は2016年の7月から9月まで受け付けた。

症状

絞り制御機構の故障の影響を受けたカメラは、絞り連動レバーを作動させることができないため、Kマウントレンズの絞りを調整することができず、適切な露光を得ることが極めて困難になる。古いM42レンズのような手動絞りを備えたレンズだけが使用可能である。この問題に対する長期的な解決策は、故障した部品を新しい部品に交換することであるが、長く連写を続けたり、単三電池を使用するなどして短期的に解決したユーザーもいる。

仮説

我々は、絞り制御ブロックの故障の可能性はカメラの使用歴やシャッター回数とともに増加すると仮定した。 また、同じ問題がK-50およびK-30とシャッターのハードウェアを共有するK-S2、K-S1、K-500にも当てはまると考えた。これらのモデルはすべて2012年から2015年に発売されたものである。

アンケートの質問内容

回答ごとに、以下のデータを収集した。

・回答日
・フォーラムのユーザー名
・カメラの機種
・シャッター回数
・購入日
・絞り機構が故障したか?
  ・故障の日付
  ・修理したか?
  ・修理費用
・追加コメント

多くの国のユーザーから回答が得られたため、平均修理費用の算定にあたっては、すべての外貨を現在の米ドル相当額に換算した。

回答

3ヶ月の調査期間中に合計470件の回答があった。異常値、重複、あり得ない日付などの無効なデータを削除した後、448件の回答が残った。これらのうちの143人、すなわち約32%が絞り制御機構の故障を報告した。

各カメラの調査結果を以下に示す。

K-S2
K-S1
K-500
K-50
K-30
合計
絞り制御機構正常 19 8 6 107 165 305
絞り制御機構故障 3 0 5 39 96 143
処置 修理せず 1 0 2 18 64 85
有償修理 0 0 0 5 20 25
保証修理 2 0 3 16 12 33

調査には含めたが、新発売のK-70のユーザーはいなかった。

修理を行ったユーザーによると、修理費用はK-50では平均195.30ドル、K-30では平均158.71ドルであった。価格は20ドルから300ドルに及んでいて、地域によって大きく異なるようであった。

ユーザーからのコメントにより、カメラのその後の処置について見識が得られた。かなりの数のユーザーが保証期間外であってもペンタックスから無償修理を受けたと報告している。また、サードパーティーの保証あるいは保険から払い戻しを受けたユーザーもいる。有償で修理する価値はないと決めた人は、カメラをジャンクとして売った(あるいは怒って別のシステムに移った)か、K-5やK-3のようなフラッグシップモデルにアップグレードしたり、M42レンズで使用しているようである。

知見

調査ではK-30とK-50が大半を占めていたので、我々はそれらのカメラに注目することにした。

もちろん、K-S2オーナーとK-S1オーナーが報告した故障の数がはるかに少ないことは朗報である。K-500の場合、比較的高い故障率が報告されたが、このカメラは通常我々のサイトにあまり訪れない狭い市場をターゲットにしているため、異常な結果はバイアスがかかっている可能性が高い。同様に、K-50とK-30の実際の故障率も調査が示唆する値よりはるかに低いと考えられる。

上の表を見ると、K-30はK-50よりも約37%対27%の確率で故障する可能性が高いことがわかる。ここでK-30は、K-50が発売されるのとほぼ同時に生産終了しており、約1年半古いことに注意すべきである。

カメラの使用歴とシャッター回数が絞り制御ブロックの故障にどのように影響するかを調べるため、これらの指標に対して故障が発生したカメラを赤色で示す散布図を作成した。カメラの使用歴は、購入から故障の間の日数、また故障しなかった場合は回答日として計算した。

ほとんどのK-30ユーザーにおいて、シャッター回数はかなり低くとどまっていることを示す以外に、このプロットではシャッター回数とカメラの使用歴の間に明確な相関は見られなかった。

一方、カメラの使用歴データを見ると、もう少し興味深い考察が得られることがわかった。

故障の可能性は、約30ヶ月まではカメラの使用歴とともに増加することがわかる。また1年前後で急激に故障率が増加している。

K-50の場合、早期に故障するカメラの数は少なかったが、新しい機種であるから長い間店頭に寝かされていることがなかったためと考えられる。

興味深いことに、K-50のヒストグラムもK-30と同じような傾向を示す。つまり1年前後で故障が急激に増えている。

考察

この調査結果により、絞り制御ブロックの故障に関するいくつかの結論を導くことができた。まず第一に、ペンタックスK-30やK-50のボディ(特に1年以上のもの)における稀な問題ではないことが確認できた。一部のユーザーに無償で保証外の修理を行ったペンタックスのサービスも、この問題の存在を認めている。

故障率はシャッター回数には大きく影響されないようだが、カメラの使用歴が重要な役割を果たしているようである。

もう一つの副次的な発見は、最新のペンタックスK-S2(おそらく新しいK-70も)も故障を免れないということである。現在のところ、これらのカメラの故障率を正確に測定することはできないが、この調査のデータは幸いにして新しいモデルでは故障が減ることを示唆している。

最後に

カメラの絞り制御機構が故障しても慌てないでほしい。近くのサービスセンターに連絡して、修理代を支払う必要があるかどうかを確認してみよう。ペンタックスはこの問題に関するアドバイスやリコールを実施していないため、保証外の無償修理は確約されているわけではない。修理見積もりがカメラの価値よりも高い場合はそのままの状態で売り、K-3あるいはK-5などこの問題の影響を受けないボディーにアップグレードするための資金とすることも検討すべきである。

安心して使うためには、K-50、K-S2、K-70などの新しいモデルを購入する場合は、ペンタックスまたはサードパーティーから延長保証を付帯することを検討すべきである。

筆者の所感

この調査結果によると、全機種合わせて全体の約32%に絞り制御機構の故障が発生しているということである。元記事では、この調査に回答したのはユーザー全体の約1割であり、怒っている人や熱烈なペンタックスファンだけが回答しているため結果にはバイアスがかかっていると推測し、実際の故障率はそれよりはるかに低いと見積もっている。

しかし本当にそうだろうか? 国内のサイトを検索してみただけで相当な数がヒットすることから、この数字は決して大げさではない気がする。約3割の個体において、遅かれ早かれ発症することは不思議ではない。

また故障率とシャッター回数の間には相関関係が見られず、おおよそ30ヶ月前後で発症することが最も多いという事実も自分の場合と合致する。おそらく製造からの年月だけが問題で、自分のようにあまり使わず長期間放置している方がかえって発症しやすいように思う。

気になるのはK-S2でも3/22という決して低くはない確率で発症していることだ。まだ新しいから発生確率が低いのは当然であるが、そもそもK-30/K-50に比べて圧倒的に「売れてない」機種だからサンプルそのものが少ないのである。さらにK-70に至っては、この調査が行われたのは2016年7~9月だから、発売直後でユーザーがいないのは当然である。にもかかわらず、「K-S2あるいはK-70では故障率が減少するだろう」と楽観的に予測しているのはいかがなものか? ゼロではないんだから、あと1~2年経てばK-30/K-50と同じ結果が出てきても不思議ではない。

結局、この問題から完全に逃れるためには、機構の異なるK-3系(今ならKPもか?)に乗り換えるしかないのである。

単三電池を使うと回避できるのか?

元記事の中で「単三電池を使用して短期的に回復させたユーザーもいる」というところが気になった。電池を変更すると直るというのはにわかに信じがたいが、手元に単三バッテリーホルダーがあるのでニッケル水素電池で試してみた。

すると驚いたことに故障がまったく発生しないのだ。前回使ってから5時間以上経過しているので、普通ならば故障が再現するはずである。しかし何度やってみてもまったく発生しない。謎の現象であるが、その理由を次のように推測している。

仕様によると、K-30の連写速度は最高6コマ/秒ということになっている。ただしそれはリチウムイオン充電池を使った場合で、単三電池を使うと若干遅くなる(確か5コマ/秒くらいか?)。ということは、シャッターが切れるまでの一連の動作が、単三電池の方が微妙に遅いということを意味している。だから連写速度を上げられないのだ。

一方、レンズを前から見ると、K-30の絞りは不思議な動作をする。シャッターボタンを押すといったん最小絞りまで絞り込まれてから、設定した絞りまで戻るのだ。絞り制御に異常が起きているときは、絞りが戻る速度が遅くなっているため、最小絞りのままシャッターが切られてしまうと考えられる。

ということは、単三電池を使ってシャッターが切れるまでのタイミングを微妙に遅らせてやれば、絞りが戻ってからシャッターが切れるので露出不良が起こらないのではないかと推測した。

とりあえず、うちのK-30は単三電池を使う限りはまったく問題なくなった(もし一日おいて故障が再現すれば書き換える)。ということは何も買わず、単三電池でK-30を使い続けるか?

単三電池が使えるK-30/K-50はまだ幸せである。単三電池が使えないK-S1以降ではどうしようもないんだから・・

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