JPEGかRAWか?

スポンサーリンク

デジタルカメラで撮影する際、JPEGかRAWかという議論はずいぶん昔から行われてきた。JPEGで撮るメリットとしては、何よりファイルサイズが小さい、手軽ということに尽きるだろう。一方、RAWで撮るメリットは後から調整がしやすいということである。もちろんJPEGで撮っても後から修正は可能だけれども、元より良くなることは絶対にないので、いじればいじるほど画質は低下する。

JPEG保存を支持する人の主張としては、画像を後からいじるのは良くない、撮影時にすべてを完結させるべきだという意見だ。自分ももともとフィルム絶対主義者だから、言わんとすることは理解できる。著名な写真家の中にはあからさまにRAW保存は邪道だという人もいる(田中長徳氏とか)。よくJPEGはポジフィルム的、RAWはネガフィルム的と例えられることがある。ポジフィルムは後からやり直しが効かないので一発勝負だが、ネガフィルムは焼き付けの段階で露出やカラーバランスを変えることも可能である。自分はもともとポジ専門だったから、デジタルでもJPEGで一発勝負するのが潔いと思っていた。だから基本的にはJPEGで撮影し、絶対失敗したくない撮影に限りRAWで撮るという使い分けをしていた。つまりRAWは「よそ行き」用だったのだ。そうしなければならない理由は、主にファイルサイズの大きさによる。

しかし最近はメディアの価格が急落し、SDHCなら16GBで1200円程度だ。ハードディスクも2TBが1万円以下で手に入る。そうなると容量をケチってJPEGで撮影する必要もなくなってくる。またRAWを一枚一枚補正しながら現像するのは大変な手間がかかるが、とりあえずプレビューするだけであれば一括処理に任せておけばよい。100枚くらいならコーヒーを一杯飲んでいる間に仕上がってしまう。本格的な調整はプリントなどする段になってからじっくりやればよいのだ。

というわけで、最近はすべてRAWで撮るのが基本になったのだが、大きな理由は二つある。一つは、RAWで撮らないとカメラの性能をフルに発揮できないという画質的な要因。もう一つは、デジタルカメラはフィルムに比べて撮影時のパラメータが非常に多くなり、撮影時に面倒なことを考えたくないという運用面での理由だ。


まず画質的な面だが、世の中にはRAWで撮らないとまともに使えないというカメラが存在する。有名なのはシグマだろう。FOVEONセンサーの特殊性もあるのだろうが、JPEGでは実に冴えない絵しか出てこないと聞く。そして自分が使っているオリンパスも、実はJPEGではダメダメなカメラなのだ。まあ最近のOM-Dなどはマシになっているのだろうが、少し前のE-620などはJPEGでは全然使い物にならない。色はヘンだし、ノイズは凄いし、解像感はボケボケだし、何にもいいところがない。コンデジの方がまだ良いとも思えるくらいだ。まあJPEG保存でも色は後から補正することも可能だが、ノイズと解像感だけはどうにもならない。一言で言えば、「線の太い」描写になるのである。

あまり良いサンプルではないが、その実例を示しておく。下の写真はE-620で撮影したものだ。


E-620 / ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6


これはカメラ本体が生成したJPEG画像の中央部分を等倍で切り出したもの。これだけ見ればそんなものと思うかもしれないが、全体にモヤモヤして細部のディテールが潰れている。これはノイズリダクションの弊害によるものだ。オリンパスのノイズリダクションは低感度でもかかる仕様だが、その効き具合が強すぎてボケボケになる。さらにシャープネスを強くかけることによってそれを取り戻そうとするから、エッジが太って線の太い描写になってしまう。これがオリンパス機の特徴だ。かといってノイズリダクションを切ると今度はノイズが酷くて使い物にならない。こればっかりはJPEGではどうにもならない。


こちらはRAWファイルをLightroom4で現像したもの。適切にノイズリダクションとシャープネスを調整している。これを見た後で、上の写真を見るとずいぶん解像感が失われていることがわかるだろう。JPEGでは潰れてしまっている細部のディテールが少し復活している。微妙な差と思われるかもしれないが、常日頃画像を見ていると気になって仕方がないレベルである。何よりカメラの解像力をフルに発揮していないというのは気分が悪い。

前の記事でも書いたが、E-620はISO400どころかISO200でも暗部に盛大にノイズが乗って使えたものではなかった。それでニコンへの乗り換えを検討していたのだが、Lightroom4を試したことにより状況は一変した。悪い悪いと言われているPanasonicのセンサーであっても、Lightroom4で現像すると見違えるほどきれいな画質に変身する。オリンパスはセンサーの性能をフルに引き出せていなかったのだ。E-620もまだまだ現役で使えると感じた次第である。ただし、オリンパス純正のOLYMPUS Viewer2はダメだ。あれで現像すると基本的にカメラと同じ画像処理が行われるので、JPEGと同じ結果にしかならない。別にAdobeの回し者ではないが、何らかの汎用RAW現像ソフトを入手することは必要だ。

そしてRAWで撮るもう一つの理由は、最近のデジタルカメラは撮影パラメータがやたらと多いということである。フィルムの場合は、まずフィルムを選ぶ時点で感度が決まる。もちろんカラーかモノクロかもその時点で決まる。発色や階調の個性もフィルムの銘柄によって決まる。撮影時にやることといえば、まずピントを正確に合わせ、露出を正確に合わせることだけだ。あとはブレに細心の注意を払って、シャッターチャンスに集中すればよい。ところがデジタルカメラの場合は、フィルムに相当するパラメータを撮影時にいくらでも変えることができる。ISO感度やホワイトバランスはもちろん、ピクチャースタイルで発色傾向を選んだり、コントラストやシャープネスを調整することも自由自在にできる。最近はアートフィルターなどと言うものまで出てきたからますますわけがわからない。

これらの機能はすべてJPEG保存を前提としたものである。ポジ的な「一発勝負」という考え方からすれば、撮影時にいろいろパラメータをいじって思い通りの表現にするということは一見理にかなっているように見える。しかし、このようなデジタルカメラ特有のパラメータというものは、RAW保存すれば現像時にすべて再調整可能なものだから、後でゆっくりPCの画面を見ながら調整すればいいだけのことである。それを邪道と呼ぶ人がいるならば、モノクロで印画紙の種類を選んだり、覆い焼きするのも同様ということになる。撮影時にあれこれいじることを楽しいと感じる人ももちろんいるだろうが、何より怖いのは「戻し忘れ」である。あまりにもいじるところが多すぎると、必ず戻すのを忘れて悲惨なことになる。自分は戻し忘れをしない自信がないから、すべてRAW保存して撮影だけに集中することを決めた。

RAW保存しても後から変えることができないのは何か? まず一つはISO感度である。これだけは後から変えることができない。無理に増感すればノイズが増えてしまう。だから撮影時に適切なISO感度を選ぶことが第一である。そして一番大事なのは露出。RAWなら後から多少の調整は効くが、やはり適正露出で撮るのが最も良い結果が得られる。白飛びさせてしまったらRAWでも救うことはできない。何より一枚一枚露出がバラついていると、後から調整するのが大変面倒だ。できるだけ一括現像で済ませるためにも正確な露出が欠かせない。あと露出にも関係するが、絞りの選択も重要。シャープなものをぼかすことはできても、その逆は不可能だから、適切な被写界深度が得られるように絞りを選択しなければならない。そしてピントを正確に合わせること。これも後から修正は効かないから絶対だ。ブレも同様で、これだけは後からどうにもできない。要約すれば、適切なISO感度を選び、露出を正確に合わせ、ピントを正確に合わせ、ブレないように細心の注意を払う、それだけのことだ。あとのホワイトバランスとか、コントラストとかは現像時にどうにでもなるので、面倒なことは気にしなくていい。アートフィルターなんてのは僕は使わない主義だが、もし使いたければOLYMPUS Viewer2で後掛けもできる。それで十分だ。こうやってRAWで撮れば、フィルムで撮るのと基本的に同じ作業だけをすればいいので気が楽だ。メーカーが謳い文句にしている多彩な機能は、実はRAW保存すればほとんど要らないものなのだ。

というわけで、最近は容量を贅沢に使ってすべてRAW保存しているのだが、ブログですぐ使いたいときや、スマートフォンでtwitterなどに投稿するときのために、一応RAW+JPEGを基本としている。ただしJPEGはあくまでもサムネールなので、1600×1200で十分だ。これなら一枚400kB程度だから無駄に容量が増えることもほとんどない。オリンパス機のいいところは、JPEGのサイズを細かく選べるところである。ニコンならL,M,Sの3種類しか選べなくて、Sでもかなり大きい。オリンパスも基本的にL,M,Sの3種類なのだが、それぞれのサイズや圧縮率は個別にカスタマイズが可能。これは非常に具合が良い。なぜ他のメーカーはやらないのだろうと思う。

カメラが吐き出すJPEGの絵に満足している人も多いだろう。カメラが出す絵というのはそのメーカー独自の味付けがなされているわけだけら、JPEGで撮ってこそ意味があるという人もいる。しかしそれはRAWの凄さを知らないからだ。いや、RAWで撮ってもカメラに付属の現像ソフトを使っている限りはカメラと同じ結果しか得られない。Lightroomなどの汎用現像ソフトを使ってこそ、初めてその凄さがわかる。一度RAWを体験するともう二度とJPEGには戻れない。JPEGで撮ってしまった写真がもったいなく思えてくる。だからもう、どんなつまらない写真でもJPEGで撮ることはない。その時はつまらないと思っても後で価値を持つ可能性は十分にある。容量をケチるためにいちいちJPEGに切り替えていたら、「戻し忘れ」が何よりも怖い。本当にどうしようもない失敗写真は後から消せばいいだけのことだ。

コメント

  1. BigDaddy より:

    ありゃっ、結論はうちと一緒でしたね(笑)。パラメータが多過ぎて撮影中に面倒ってのは非常に共感出来ます。ただPentaxの場合、ちゃんと設定してやると物凄いJPGが出て来てくれるので、一応はちゃんと設定しています。ただ、良く使う設定は、Lightroom 4のRAW現像の初期設定をならって、JPGからでもレタッチが容易になるようにしています。だったらRAWでって事にもなりますが、これまたPentaxの場合、JPGには特殊なシャープネス処理が施されていて、これが結構具合がいいんですよ~。

  2. オーナー(考え中) より:

    >BigDaddyさん

    自分もできるだけRAW現像が楽になるように試行錯誤して設定を最適化しています。
    オリンパスに限らず、どこのカメラでも言えるんですが、JPEGだとシャープネスの掛かり具合が雑なのが気になるんですね。それだけでもRAWで撮る理由があります。Pentaxのシャープネスはきれいなんでしょうか。

    JPEGで完結させるというスタイルは言ってみれば現地でレタッチを行っているようなものですね。ミラーレスのようなライブビュー撮影になるとよりその傾向が強いと思います。現地での貴重な撮影時間をレタッチに費やすより、家に帰ってからPCで心ゆくまで調整した方がよっぽど合理的だと思います。

  3. BigDaddy より:

    仰る通り、自宅でゆっくり調整した方が合理的ですよね。またそれが楽しいんですよね。自分で好きなように調節出来る、最高です!。

    以下、Pentaxの話になって申し訳ないのですが・・・。

    実は明日のネタでローパスフィルターに絡めてPentax独特のシャープネスについて書いているんです。Pentaxのシャープネスはエッジが細いままカリカリにする仕様で、街撮りなんかは直線が多く、エッジが太い方がコントラストがつき、ありがたかったりしますが、草木には最適です。ただ面部分にも掛かるので風景によってはザラつく事があります(プリントすれば目立たなくなります)。

    また欠点としてはPentaxが提供する現像ソフトではこの独特のシャープネスは作れず、撮って出しのJPG用に設定するか、カメラ内現像を利用して、再現像するしかなんです。これが面倒なので、なるべく撮って出しJPGが使えるように設定するのがPentaxを上手く使うこつかもしれません。

    K-5、K-5IIはユーザーモードを5つ登録出来るので、シャープネス以外にコントラスト、彩度など登録し、この5つを駆使していますよ。でも最適な絵を作るのに半年以上も掛かりました(笑)。

  4. オーナー(考え中) より:

    >BigDaddyさん

    まあカメラでいじり倒すのが楽しいという人もいるので、人それぞれですけどね。(笑)

    エッジが太いと草木などを撮るときに汚くなってイヤなんですね・・
    Pentaxの細いエッジに興味あります。(笑)
    K-01がめちゃくちゃ安いので思わず逝きそうになるんですが・・(^^;

    Lightroomで現像する場合、基本的にはアンシャープマスクの半径を小さめにすることによって、エッジが太くなるのは防げるでしょうね。