そんなにデカいカメラが好きなのか?

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昨日、パナソニックのフルサイズミラーレスとなるSシリーズが発表され、同時にライカとシグマも参画して3社でLマウントアライアンスを立ち上げるという構想が披露された。概ね事前リークの通りであったが、3社が相互乗り入れ可能となればかなり魅力的なシステムにはなるだろう。パナソニックはm4/3で培ったオープンマウントというプラットフォームの旨味を知り尽くしているからこそ可能だったのだと思う。

これでソニー、ニコン、キヤノンと合わせて4社のフルサイズミラーレスの全貌が明らかになり、想像なしで議論できるようになった。奇しくも6年前に書いた記事が現実になろうとしているのか? その中で見えてきたフルサイズミラーレスの抱える問題点と、蚊帳の外に置かれたオリンパスの行く末について愚痴ってみたい。

まず各社出そろったフルサイズミラーレスを見て、第一印象は「とにかくデカい」のひと言。もちろんボディー自体はミラーレス化で一眼レフより大幅に小さくはなっているのだが、レンズはそれほど小さくはならず、トータルで見ると一眼レフと大して変わらないデカさである。むしろ小さなボディーに大きなレンズというアンバランスさで余計に大きく見える。50mmF1.8のようなごく普通のスペックのレンズがあのデカさなんだよ? フランジバックが短くなった分、長さが継ぎ足されてむしろ大型化している。小型化することがミラーレスの利点じゃなかったのか? 周辺まで文句を言われない画質を追求するとあのサイズになるのはわかるが、すでに原点を忘れているとしか言いようがない。

そして値段が高すぎる! アホかと言いたくなるような価格設定。ニコンのZ7なんてあの値段じゃD850を買った方が絶対お得でしょ? せいぜい新しもの好きの年寄りが買うだけのカメラなんだろうね。だいたいミラーボックスとペンタプリズムを廃して原価は安くなるはずなのに高くなる理由が理解できない。ただのボッタクリ? ボディーだけでなくレンズもアホみたいな値段だね。最高性能を追求したのか知らないが、将来性がまったく未知の新マウントにそこまで金を出せる狂信者がどこまでいると思っているのか? まったく市場性を無視した価格設定である。マウントアダプターで既存のレンズが使えると言ってもいろいろ制約が付くんだから、それなら最初から一眼レフにしといた方がリーズナブルでしょ? その方がバランスも良いし。

6年前に描いた未来予想図はフルサイズシステムの小型化、そして量産効果による低価格化だった。この二つが前提となって初めて一般への普及が可能となる。しかし現実はまったく逆の方向へ進んでいるように見える。カメラはむしろ大型化し、価格は想像を絶するほど高くなっている。もはや20万円超のカメラが当たり前になり、20万円なら安いと言われるくらいである。カメラは一般庶民から縁遠くなっている。誰がそんな未来を望んだのだろうか?

6年前の予想ではフルサイズが当たり前になり、カメラはフルサイズとコンデジに二極化されるという未来を描いていた。しかし現実はどうだろう? ご存知のようにコンデジは急速に市場を縮小し、今や高倍率ズーム機と大型センサー機を除いてほぼ絶滅に追いやられた。かつてコンデジが担っていた役割はスマホに取って代わられたのである。これは全く予想外の展開。しかし、今後はAPS-Cやm4/3もコンデジと同じ運命をたどるのではないだろうか?

今回のフルサイズミラーレス戦争を見ていると、ユーザー不在のメーカー主導で仕掛けられているように見える。メーカーとしては飽和した一眼レフ市場を見限って新マウントを投入することにより、新たな買替え需要を生み出したいだけなのだろう。それに乗るかどうかはユーザーの判断次第。しかし今回発表されたシステムを見ていると、ユーザーが心から欲しているものとはとても思えない。とにかくデカく、そして高すぎる。メーカーとしてはすべてをフルサイズに置き換えることが思惑なのだろうが、そうなると不幸なのはユーザーの方だ。もし将来、カメラがフルサイズとスマホに二極化されたらどうする? あんな高くてデカいカメラは持ちたくないとなると、好むと好まざるとにかかわらずスマホしか選択肢がなくなるのだ。それはユーザーにとって不幸以外の何物でもない。

そこで心配なのがm4/3の将来だ。パナソニックは昨日の発表でm4/3も平行して開発を続けると言っているし、超弩級の広角ズームも開発しているらしいから当面は安泰なのだろう。しかしそれもいつもの「やってます」ポーズに過ぎない可能性も否定できない。ただでさえ小さいm4/3市場の中で、パナソニックはオリンパスの1/4しかシェアがないとも言われている。カメラ業界全体から見れば取るに足りない存在だ。それだから仮にもSシリーズがヒットして市場の1割くらいを占めるようになれば、採算の取れないm4/3は「や~めた」と放り出す可能性は十分にある。すでにフォーサーズでやっているのだから誰も驚かないし、そういうものだと思っている。

そうなると重要になってくるのがオリンパスの立ち位置だ。オリンパスは今回蚊帳の外でLマウントアライアンスには加わらず、100周年記念でm4/3の最上位機種を出すと言っている。つまりm4/3は続けますよという宣言なのだが、問題はオリンパスの体力がどこまでもつか?である。もし将来フルサイズが主流になってくれば、センサーサイズの小さいm4/3が割を食うのは明らかである。いくら小型システムの良さを訴えても、ほとんどのユーザーは高感度と高画素にしか関心がないからだ。それはかつてのフォーサーズ失敗が証明している。一度フルサイズ化で出遅れてしまったら今のオリンパスに挽回するのは不可能だ。もはやカメラ事業から撤退という最悪のシナリオも覚悟しなければならない。

そうならないためにも、オリンパスはm4/3の強みを最大限に生かした製品を世にアピールすべきである。小型センサーだからこそ、大口径レンズや望遠レンズをコンパクトに作ることができる。これは何物にも代えがたい利点だ。そういう需要は必ずあるし、多くのユーザーが支持している。だからこそm4/3はここまで発展してきたのだ。思うにm4/3はボディーとレンズのバランスが非常にいい。フルサイズは言うに及ばず、APS-Cでさえどうしてもレンズヘビーになってしまうのは否めない。しかしm4/3ならばスペックの割に小さなレンズが作れて見た目に違和感がなく重量バランスも良い。画質とサイズとの絶妙なバランスの上に成り立っていると言えるだろう。オリンパスはフルサイズなど目もくれず、自らが立ち上げたシステムにもっと自信を持ち、m4/3を大事に育てるという姿勢を貫くべきである。そのことがフォーサーズでユーザーを裏切ったことへのせめてもの罪滅ぼしとなろう。

蛇足だが、オリンパス以上に心配なのは「蚊帳の外の外」のペンタックスだ(笑)。もはや終わったメーカーとしか思われてないようだね(苦笑)。ミラーレスどころかK-3II後継さえ未だに出てこないからそう思われても仕方がないか。しかしK-01をやめちゃったのは失敗だったと思うんだよ。別にフランジバックを縮めなくていいから、ミラーを取っ払っただけでKマウントレンズが普通に使える、そういう発想は良かった。ただあのデザインがね・・(笑)。もっと普通のデザインにしてEVFも付けたら結構売れただろうに惜しい。今からでも遅くはない。K-70からミラーボックスを取っ払ってEVFを付けただけのミラーレス機なんてのを出せないものか?

ともかく全てのユーザーがフルサイズを望んでいるわけではない。小型化と低価格化なくしてその方向はメーカーの意向だけを反映したものに過ぎない。小型システムの需要は根強く存在し、そのためにAPS-Cやm4/3があることをメーカーは忘れてはならない。m4/3が担う役割をスマホに置き換えることなどできないのだから。

コメント

  1. 猫娘も変わったよ! より:

    カメラ業界はミラーレス&フルサイズにまっしぐら、自動車業界はEV&HVにまっしぐら。この先どうなっていくか楽しみですね!もう国内は見限ってしまったんでしょう。

  2. 型落ちハンター より:

    >猫娘も変わったよ!さん

    日本人はもうカメラを買えない時代が来そうです(苦笑)。

  3. こんにちは。
    仰る通りです。普通のユーザーが買える普通のカメラが、無くなってしまいそうですね。
    誰もがカメラに20万円も出せる訳では無いと思うのですが・・・

  4. 型落ちハンター より:

    >中古のスバルさん

    もはや貧しくなった日本人は相手じゃないようですね。
    中○の富裕層あたりがメインターゲットなのか?

  5. BigDaddy より:

    わぉっ!、書こうと思っていた内容が全てここにあります!。この思考、私達二人があまのじゃくって訳じゃないと思うんですよね。みんな感じている筈なのに何故かZ7は予約パンパンなようですし、EOS Rも明らかに手抜きカメラなのに結局馬鹿売れするんでしょうし(笑)。

    しかし、これは困った、すでに下書きが済んでいる(笑)。そんなワタクシ、3年後にはLumix S1いいかなぁと思っています。近いうちにネタにしますが、3年後はサイズ考慮でα9、機能優先でS1、そんな選択肢を妄想しています。

    SonyはOlympus株を大量売却しましたがまだ持っているんですよね。となるとSony Eマウントでって線も可能性としてちょっとあるかなぁと。Sony E VS Leica Lとなり、これはこれで買う買わないは別にして消費者としては面白いかなぁと。100周年で何を出してくるか、超フラッグシップは出すらしいですが、E-M5markIIIがそろそろですよね。

    Pentaxは仰る通りですし、シャープが辿った道、中国か台湾の企業に買われて今のクオリティを維持し、アジアで勢力を増しての逆輸入ってのがPentaxにとって最良の道かもしれません。でももっとヤバイのFujifilmだと思うんですよねぇ。中判なんて国民の99%は買えないんですから結果、APS-Cしか持っていない、そしてボディ内手ブレ補正に否定的なメーカーですもん。

    私はオールドレンズ使う時だけα7IIですが、少なくともあと3年はm4/3メインで行くと思います。やはりあの小ささ、軽さは最高です。

    さぁ、ちょいとミラーレスを絡めた各メーカーの考察ネタ、少しいじらないと(笑)。ホント、笑っちゃうくらい内容がそっくりなんですよ。

  6. BigDaddy より:

    追伸

    10月の中旬、14日か16日くらいにOlympus、Pentax、Fujiflmどうなるんじゃ?、なる記事を投稿するつもりなんですが、こちらの記事をリンクしても良いでしょうか?。

  7. 型落ちハンター より:

    >BigDaddyさん

    はい、リンクはご自由にどうぞ。

    まあ今売れてるのはご祝儀でしょうけど、ネット上では否定的な意見が結構目立ちます。そのほとんどがデカさへの絶望感ですね。私の予想としては、NikonとCanonはコケるだろうと見ています(笑)。理由は一眼レフと棲み分けしなければならないからです。一眼レフと比べて大してメリットがないとわかると、あえて不自由なミラーレスを選ぶ理由がなくなります。プロ向けにはやはり一眼レフの需要が大きいわけで、それを無視するわけには行きません。結局、中途半端なことをやってもユーザーは便利な方へ流れるんです。

    その点、一眼レフを持たないパナは足かせがないので強いです。中途半端ではない全力で攻めてきますからね。Leica, Sigmaと組んだら鬼に金棒でしょう。最後に勝ち残るのはパナだろうと思ってます。最終的にはSony vs Panasonicという構図になるんでしょうか?

    SonyはOlympusと組む可能性、まだ残ってるんですかね? しかし下手に巻き込まれちゃうとまたフォーサーズの二の舞になりますよ。今のOlympusに135とm4/3を両立させる体力はありません。何しろフォーサーズとm4/3も両立できなかったメーカーですからね(笑)。かつてAF化の波に乗り遅れたOMと同じく、m4/3はニッチな需要を満たすべく死守しなければなりません。それこそがOlympusの生き残る道でしょう。

    フルサイズミラーレスについて考察すると、どうしても同じような論調になると思うんですよ。というわけで、また新ネタを期待しています(笑)。

  8. 久しぶりに拝見させていただきました より:

    最近、年齢半分以下の20歳くらいの若い衆と話す機会ありまして、彼らがSONYの30万円くらいのカメラに憧れてるので驚きました。噂だけでいいというのです。その先にとんでもなく金銭を要するおそるべきレンズ沼があるのも知らないで・・
    「◯◯さんが使ってるカメラだ」みたいにネットの知識だけでもう語る語る。
    「D5300ダブルズームキットやすいぞお!これで十分。同じの撮れる。必要だったら単焦点買えば?」と言っても耳を貸さない。ネットで宣伝されてるものに直に引きずられてる。
    そんな彼らに、写真が上手くなるには先ず朝練だよね、と言ったら、そんなのしたくないというのです。
    なんというか罪深い世界だ。アフィサイトだけがものを言う。

  9. 型落ちハンター より:

    >久しぶりに拝見させていただきました さん

    最近の若者はネットに洗脳されやすいと言われてますね。スマホ世代のなせる業でしょうか。

    加えて若者の貧困化が叫ばれてますが、その中でなぜ月収を超えるようなカメラを買えるのか不思議でもあります。おそらく金の使い途も変わってきてるんでしょうね。若者こそカメラメーカーのいいカモなのかもしれません。

  10. 猫娘も変わったよ! より:

    >その中でなぜ月収を超えるようなカメラを買えるのか不思議でもあります。おそらく金の使い途も変わってきてるんでしょうね。

    私が若い頃は健全な男の金の使い道で一番大きなものはクルマでしたが今時の若者はデジタル機器なのでしょうね。もうカメラは精密機器じゃなくデジタル家電ですね。使わなくなったNewF-1を売却前に弄ってましたがやはり今のカメラにあの触感は無理です。

  11. 型落ちハンター より:

    >猫娘も変わったよ!さん

    今の若者はクルマ買わない、酒飲まない、旅行しないので金が余ってるんでしょうね(笑)。
    その金の使い途はスマホ、ゲームへと流れていくのでしょう。カメラが趣味だったら全財産をカメラに投入ってとこですね・・

  12. 通りすがりの者 より:

    携帯電話業界と同じで大手2社がシェアの60%を占めてる異常事態で値下がりもせず庶民のカメラ離れは進むのでしょう。
    ネット掲示板など見ててもCやNのユーザーは贔屓メーカーの批判をしない風潮が日本特有で、(良い機能は良い! 悪い機能には触れない)それでは本当の強いメーカーは育たないと悲しくなります。恐らく、現時点ではC社はミラーレスに関して他社より技術的な遅れがあるのでしょうがユーザーはそれを認めない。そこをあえて声に上げなければ今後が心配ですし健全な企業間競争は起こらずC社独り勝ちで業界は廃れて行くと思います。結局ユーザーが自分の首を自ら絞めてるように見えますね。

  13. 型落ちハンター より:

    >通りすがりの者さん

    C社のミラーレスは今どき手ぶれ補正も付いてないのはカメラとして欠陥品に近いと思うのですが、誰も文句を言わずにありがたがって買うのが不思議ですね。というか気持ち悪いです。
    これはApple社に誰も文句を言わない狂信者と同じ日本特有の構図ですね。おっしゃる通り、こういうことをやっていると間違いなく業界が廃れるでしょう。