そんなにデカいカメラが好きなのか?

投稿日:2018年9月26日 更新日:

デジタルカメラ

昨日、パナソニックのフルサイズミラーレスとなるSシリーズが発表され、同時にライカとシグマも参画して3社でLマウントアライアンスを立ち上げるという構想が披露された。概ね事前リークの通りであったが、3社が相互乗り入れ可能となればかなり魅力的なシステムにはなるだろう。パナソニックはm4/3で培ったオープンマウントというプラットフォームの旨味を知り尽くしているからこそ可能だったのだと思う。

これでソニー、ニコン、キヤノンと合わせて4社のフルサイズミラーレスの全貌が明らかになり、想像なしで議論できるようになった。奇しくも6年前に書いた記事が現実になろうとしているのか? その中で見えてきたフルサイズミラーレスの抱える問題点と、蚊帳の外に置かれたオリンパスの行く末について愚痴ってみたい。

まず各社出そろったフルサイズミラーレスを見て、第一印象は「とにかくデカい」のひと言。もちろんボディー自体はミラーレス化で一眼レフより大幅に小さくはなっているのだが、レンズはそれほど小さくはならず、トータルで見ると一眼レフと大して変わらないデカさである。むしろ小さなボディーに大きなレンズというアンバランスさで余計に大きく見える。50mmF1.8のようなごく普通のスペックのレンズがあのデカさなんだよ? フランジバックが短くなった分、長さが継ぎ足されてむしろ大型化している。小型化することがミラーレスの利点じゃなかったのか? 周辺まで文句を言われない画質を追求するとあのサイズになるのはわかるが、すでに原点を忘れているとしか言いようがない。

そして値段が高すぎる! アホかと言いたくなるような価格設定。ニコンのZ7なんてあの値段じゃD850を買った方が絶対お得でしょ? せいぜい新しもの好きの年寄りが買うだけのカメラなんだろうね。だいたいミラーボックスとペンタプリズムを廃して原価は安くなるはずなのに高くなる理由が理解できない。ただのボッタクリ? ボディーだけでなくレンズもアホみたいな値段だね。最高性能を追求したのか知らないが、将来性がまったく未知の新マウントにそこまで金を出せる狂信者がどこまでいると思っているのか? まったく市場性を無視した価格設定である。マウントアダプターで既存のレンズが使えると言ってもいろいろ制約が付くんだから、それなら最初から一眼レフにしといた方がリーズナブルでしょ? その方がバランスも良いし。

6年前に描いた未来予想図はフルサイズシステムの小型化、そして量産効果による低価格化だった。この二つが前提となって初めて一般への普及が可能となる。しかし現実はまったく逆の方向へ進んでいるように見える。カメラはむしろ大型化し、価格は想像を絶するほど高くなっている。もはや20万円超のカメラが当たり前になり、20万円なら安いと言われるくらいである。カメラは一般庶民から縁遠くなっている。誰がそんな未来を望んだのだろうか?

6年前の予想ではフルサイズが当たり前になり、カメラはフルサイズとコンデジに二極化されるという未来を描いていた。しかし現実はどうだろう? ご存知のようにコンデジは急速に市場を縮小し、今や高倍率ズーム機と大型センサー機を除いてほぼ絶滅に追いやられた。かつてコンデジが担っていた役割はスマホに取って代わられたのである。これは全く予想外の展開。しかし、今後はAPS-Cやm4/3もコンデジと同じ運命をたどるのではないだろうか?

今回のフルサイズミラーレス戦争を見ていると、ユーザー不在のメーカー主導で仕掛けられているように見える。メーカーとしては飽和した一眼レフ市場を見限って新マウントを投入することにより、新たな買替え需要を生み出したいだけなのだろう。それに乗るかどうかはユーザーの判断次第。しかし今回発表されたシステムを見ていると、ユーザーが心から欲しているものとはとても思えない。とにかくデカく、そして高すぎる。メーカーとしてはすべてをフルサイズに置き換えることが思惑なのだろうが、そうなると不幸なのはユーザーの方だ。もし将来、カメラがフルサイズとスマホに二極化されたらどうする? あんな高くてデカいカメラは持ちたくないとなると、好むと好まざるとにかかわらずスマホしか選択肢がなくなるのだ。それはユーザーにとって不幸以外の何物でもない。

そこで心配なのがm4/3の将来だ。パナソニックは昨日の発表でm4/3も平行して開発を続けると言っているし、超弩級の広角ズームも開発しているらしいから当面は安泰なのだろう。しかしそれもいつもの「やってます」ポーズに過ぎない可能性も否定できない。ただでさえ小さいm4/3市場の中で、パナソニックはオリンパスの1/4しかシェアがないとも言われている。カメラ業界全体から見れば取るに足りない存在だ。それだから仮にもSシリーズがヒットして市場の1割くらいを占めるようになれば、採算の取れないm4/3は「や~めた」と放り出す可能性は十分にある。すでにフォーサーズでやっているのだから誰も驚かないし、そういうものだと思っている。

そうなると重要になってくるのがオリンパスの立ち位置だ。オリンパスは今回蚊帳の外でLマウントアライアンスには加わらず、100周年記念でm4/3の最上位機種を出すと言っている。つまりm4/3は続けますよという宣言なのだが、問題はオリンパスの体力がどこまでもつか?である。もし将来フルサイズが主流になってくれば、センサーサイズの小さいm4/3が割を食うのは明らかである。いくら小型システムの良さを訴えても、ほとんどのユーザーは高感度と高画素にしか関心がないからだ。それはかつてのフォーサーズ失敗が証明している。一度フルサイズ化で出遅れてしまったら今のオリンパスに挽回するのは不可能だ。もはやカメラ事業から撤退という最悪のシナリオも覚悟しなければならない。

そうならないためにも、オリンパスはm4/3の強みを最大限に生かした製品を世にアピールすべきである。小型センサーだからこそ、大口径レンズや望遠レンズをコンパクトに作ることができる。これは何物にも代えがたい利点だ。そういう需要は必ずあるし、多くのユーザーが支持している。だからこそm4/3はここまで発展してきたのだ。思うにm4/3はボディーとレンズのバランスが非常にいい。フルサイズは言うに及ばず、APS-Cでさえどうしてもレンズヘビーになってしまうのは否めない。しかしm4/3ならばスペックの割に小さなレンズが作れて見た目に違和感がなく重量バランスも良い。画質とサイズとの絶妙なバランスの上に成り立っていると言えるだろう。オリンパスはフルサイズなど目もくれず、自らが立ち上げたシステムにもっと自信を持ち、m4/3を大事に育てるという姿勢を貫くべきである。そのことがフォーサーズでユーザーを裏切ったことへのせめてもの罪滅ぼしとなろう。

蛇足だが、オリンパス以上に心配なのは「蚊帳の外の外」のペンタックスだ(笑)。もはや終わったメーカーとしか思われてないようだね(苦笑)。ミラーレスどころかK-3II後継さえ未だに出てこないからそう思われても仕方がないか。しかしK-01をやめちゃったのは失敗だったと思うんだよ。別にフランジバックを縮めなくていいから、ミラーを取っ払っただけでKマウントレンズが普通に使える、そういう発想は良かった。ただあのデザインがね・・(笑)。もっと普通のデザインにしてEVFも付けたら結構売れただろうに惜しい。今からでも遅くはない。K-70からミラーボックスを取っ払ってEVFを付けただけのミラーレス機なんてのを出せないものか?

ともかく全てのユーザーがフルサイズを望んでいるわけではない。小型化と低価格化なくしてその方向はメーカーの意向だけを反映したものに過ぎない。小型システムの需要は根強く存在し、そのためにAPS-Cやm4/3があることをメーカーは忘れてはならない。m4/3が担う役割をスマホに置き換えることなどできないのだから。

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