ユーザーを大切にしない企業に未来はない

投稿日:2013年9月26日 更新日:

デジタルカメラ

世間ではE-M1の発表で浮き足立っているが、そんなものに興味はない。その陰でひっそりと行われたフォーサーズ終了に怒り心頭なのだ。この際だから徹底的に言わせてもらおう。オリンパスはユーザーのことなどこれっぽっちも思っていない。とにかく目先の利益だけ確保できればそれでいいと考えている企業だ。

思えば鳴り物入りでフォーサーズが登場したのが今からちょうど10年前の2003年。当初から高感度に弱いだの、無駄にでかいなどと叩かれながらも地道に改良を加え、次第にラインナップを拡充していった。フォーサーズの基本理念は小さいフォーマットの利点を生かし、レンズ性能を極限まで追求することによって、コンパクトで高性能なシステムを実現することであった。そのため他社には真似のできないような高性能なレンズが存在し、そこに惚れた固定ファンが多数いたのも事実。しかしフォーサーズの絶頂期ともいえる2008年、突如としてマイクロフォーサーズ規格が発表され、2009年に最初のマイクロフォーサーズ機となるPEN E-P1が発売されることになる。当初、E-SYSTEMは30年は使えるシステムを目指すと豪語していたはずのオリンパスが、わずか5年にして方針転換である。そして2010年のE-5を最後にフォーサーズマウントのボディーは新規に開発されなくなった。今ごろになってフォーサーズ終了を言い出したが、実質的には登場からわずか7年で事実上の終焉を迎えていたのである。


もちろんカメラは工業製品であり、利益の追求が企業の目的であるから、永遠に続くシステムなどあり得ない。時代の変化とともにいずれ終わるときが来る。たとえばOMシステムは登場から30年後の2002年に静かに幕を閉じた。それでも30年も続けば企業としての責任は立派に果たしたと言えるだろう。ご苦労様と言いたい。しかしだ、登場からわずか5年で方針転換し、7年後には実質的に終了したフォーサーズはあまりにも早すぎる。これでは「試しにフォーサーズ規格を作ってみましたけど、うまく行かなかったのでやっぱりマイクロフォーサーズにします」と言っているに等しい。企業にしてみれば「ごめんなさい」で済むかもしれないが、フォーサーズに期待して大金を注ぎ込んだユーザーの立場はどうなるのか? 「作り逃げ」は企業として無責任極まりない最悪の態度である。ボディーはともかく、レンズは後々まで残るものだから、勝手にマウントを変えてもらうとユーザーは大迷惑なのだ。いくらマウントアダプターで位相差AFも使えますなんて言ったところで、そんなのはクレームから逃れるための言い訳に過ぎない。しょせん「本物の」位相差AFに敵うはずがないし、アダプター経由では強度的にも心許ない。とりあえず「あなたのフォーサーズレンズも使えるようにしてあげましたから許して」と言っているようにしか聞こえない。

オリンパスの場当たり的な体質はそれだけじゃない。E-P1以降の新製品開発のサイクルは本当に酷かった。1年ごとなんてものじゃなく、わずか数ヶ月単位でE-P1, E-P2, E-PL1, E-PL1s, E-PL2, E-P3と矢継ぎ早に出してきた。そしてそのどれもが「どこがどう違うのかよくわからない」くらいの差しかないのだ。これなどは典型的な「試作品」のレベルといえる。とりあえず市場に出す前の試作品を製品として出してみて市場の反応を窺い、それを元に改良を加えていくというやり方だ。こんなカメラを買っちゃったユーザーはまさに「実験台」だ。でもオリンパスはそんなこと知っちゃいない。実験だろうが何だろうがとにかく儲かればいいのだ。それを後の完成品につなげてガッポリ儲ける糧にする。それがE-M5やE-P5なのだろう。大枚はたいて試作品を買っちゃったユーザーは泣き寝入り。一番悲惨なのはE-P1のユーザーだろう。そのわずか4ヶ月後に出てきたE-P2は、単にE-P1にEVFが付くように改良しただけに過ぎない。それを知ってE-P1ユーザーは怒り狂っただろう。これなどはどう考えてもEVFが間に合わなかったから、とりあえずE-P1として出したとしか思えない。本来ならE-P2が最初のPENになるはずだったのだ。完璧にユーザーを蔑ろにしたペテン商売である。

どうもオリンパスの場当たり的、その時さえ良ければいいという風潮は昔から伝統的に変わらないようだ。例の損失隠し事件にしても、とりあえず今はバレなきゃいいと思っていたことは間違いないだろう。本当に根底から腐っている。そしてユーザーを大切にしない風土、もっと言えば将来を見据えた事業展開ができないこともこの会社の伝統的な体質らしい。それができないからこそ、いつまでも低シェアに甘んじているのである。ここから本題に移るが、それを最も端的に表しているのが純正RAW現像ソフトのOLYMPUS Viewer(以下OV)だと思っている。

OVの詳細については省略するが、とりあえずRAWで撮っておけば後から自由にパラメータを変えることができ、カメラが出すJPEG画像とほぼ同じ絵が得られるのが純正現像ソフトの役割。これにはオリンパス独自のアートフィルターも含まれ、後からでもかけ直すことができるので、撮影時にアートフィルターを適用させるより何かと都合が良い。しかしだ、このOVではアートフィルターに関して不条理な制約を設けている。アートフィルターが搭載されたのはE-30が最初であったが、それ以前の機種では何とアートフィルターを適用することすらできないのだ。そしてアートフィルターも世代を追うごとに新しい種類が追加されていっているが、基本的にはそのカメラに初めから搭載されている種類のアートフィルターしか選ぶことができない(一部例外はある)という徹底ぶり! 何というドケチな仕様だろうか!

アートフィルターと言ってもたかがソフトウェア処理である。別にオリンパスの専売特許でも何でもなく、同じことはPhotoshopなどを使えばいくらでも再現することができる。それなのにカメラに内蔵されている種類しか使わせないとは何というケチくさいことをするのだろうか。これなどもユーザーの心理を完全に無視していると言える。だいたいE-P1以降のPENシリーズはモデルチェンジの間隔がきわめて短く、どこが変わったのかよくわからないことが多い。E-PL5でようやくセンサーが大きく進化したが、あとはほとんどアートフィルターの種類が増えたり、操作性が少し改善されたりくらいの差しかない。それらはほとんどソフトウェアの変更で済むような些細な問題だ。だからアートフィルターの種類が増えたからと言って、わざわざ買い換えるような律儀な人間はいないだろう。もしOVで新しいアートフィルターが使えるのならば、今のカメラをもう少し使い続けようと誰でも考えるだろう。そしてセンサーなりAF性能なりが大きく進化した時点で満を持して新機種に買い換えるのだ。ソフトで解決できる問題は買い換えに値せず、ハードに有意義な進化があったときのみ買い換えの対象とする。それがまともなユーザーの思考回路だ。しかしオリンパスはそれをわかっちゃいない。旧機種のユーザーには意地でも新しい機能を使わせず、あくまでも一世代ごとに買い換えを迫ってくるのだ。「新しいアートフィルターを搭載してやったから、それを使いたければ新型を買え!」と来たもんだ。オリンパスは値下がりのスピードが凄まじく、最後はいつも投げ売り状態になるが、逆に言えばもともとそのくらいの価値しかなかったということになる。次々と新製品を出しては暴落させるのも、わざとお買い得感を演出して買い換えを促そうとしているようにしか思えない。

OVのドケチ仕様はアートフィルターだけかと思っていたら、実はそうではないらしいことがわかってきた。とある方のブログで知ったのだが、E-P3のRAWファイルをOVで現像すると、いくらノイズリダクションをオフにしても暗部だけが妙にモヤモヤした塗り絵画質になってしまうということらしい。実際に画像がアップされていたので見てみたが、確かにノイズを無理やり潰したような酷いモヤモヤ画像だった。そしてこれはどうもオリンパス得意の「ファインディテール処理」が悪さをしているらしいこともわかってきた。ファインディテール処理といえばE-5に搭載されたのが最初で、後にE-P3以降のPENシリーズ、OM-Dシリーズにも搭載されている。画像処理エンジンの世代で言えば、TruePic VIに相当する。ところがE-PL2のRAWファイルを同じようにOVで現像しても、そういうモヤモヤ画像にはならないのだ。ノイズリダクションをオフにしてやれば、多少ノイズが残るものの、全体にピリッとした画像になる。同じOVで処理したにもかかわらず、明らかにE-P3とは絵作りの傾向が異なっている。ちなみにE-PL2の画像処理エンジンはTruePic Vという一世代前のもので、ファインディテール処理はまだ搭載されていない。そこから類推すると、どうやらOVはカメラの機種によって画像処理エンジンに相当するアルゴリズムを使い分けているとしか考えられなくなってきた。結果的にカメラが吐き出すJPEG画像と同じに仕上がるようにチューニングされているのである。基本的にセンサーが同じでも画像処理エンジンが進化すれば画質は向上するから、旧機種のユーザーでも新しい画像処理エンジンの処理を適用させればその恩恵にあずかることができる。これもまたソフトウェア処理に過ぎないから、RAWファイルさえ残っていれば画像処理エンジンが進化するほど良い画質を手にすることが可能になる。それが本来あるべき姿だ。しかしここでもオリンパスは頑として旧機種のユーザーに新しい画像処理エンジンを提供しようとはしない。「古いカメラはいつまでも古いままでいろ!」と言っているのである。

そして極めつけのドケチ仕様を今日発見してしまった。つい最近、OV3が1.1にアップデートされたのだが、新バージョンではハイライト/シャドウコントロールという機能が(ようやく)実装された。これまでOVにはこの機能がないことが大いに不満であり、そのためにLightroomを使っていたとも言える。デジタルカメラ、特にフォーサーズは白飛びに弱いため、明暗差の強い風景ではギリギリ白飛びしない露出で撮っておいて、後からシャドウを持ち上げるという処理を常套的に行う。これをやらなければRAWで撮る意味はあまりないとも言えるほどだ。ところがである、何とこのハイライト/シャドウコントロールは最新機種のE-M1でしか使うことができないのだ! ご丁寧にもTruePic VIIのロゴが入っている。TruePic VII搭載機種以外はお断り!ということらしい。あまりのドケチさ加減に呆れてしまった。ハイライト/シャドウコントロールと言っても実体はトーンカーブと同じで、ニコンのViewNXには初めから実装されている機能。RAW現像をやるには必須の機能であり、あって当たり前の機能ともいえる。 それをいかにも勿体ぶって、最新機種のユーザーにしか使わせないとはどういうことか? しかもハイライト/シャドウコントロールは何もE-M1で初めて搭載されたわけではなく、あまり知られていないがE-PL2にもちゃんと実装されている。カメラにもともと搭載されている機能がOVで使えないとは、それ自体矛盾しているではないか! まったく信じられないドケチさ加減に開いた口が塞がらなかった。

これでオリンパスの企業風土が明らかになってきただろう。要するに「釣った魚に餌はいらない」ということに尽きる。後から追加された新機能は、新製品に買い換えない限り一切使わせないという強い意志が感じられる。しかしこういうユーザーの神経を逆撫でするようなケチくさいことをやって、オリンパスが何か得をするとでも思っているのだろうか? 逆にもし、新しいアートフィルターや新しい画像処理エンジンを旧機種のユーザーにも開放して大盤振る舞いしたとしたら、その時は確かにしばらく買い換えを思いとどまるユーザーが増えるだろう。しかし、RAW現像なんてめんどくさいことはやりたくないと思っているユーザーならば、やはり欲しい機能があればすぐに買い換えるはず。少なくともそのことでオリンパスが何か損をするわけではない。それどころか、新機能を惜しげもなく提供することで既存ユーザーからは「神」扱いされ、後々までユーザーの面倒を見てくれるありがたいメーカーというブランドイメージが作られる。そして次に画期的な新製品が発売されたときには、既存ユーザーはこぞって買い換えをしてくれるだろう。なぜならば、オリンパスはいつまでもユーザーを見放さないでいてくれるから安心して投資できるという意識が定着しているからだ。しかし現実のオリンパスはそれと正反対のことをやってしまっている。今のカメラを少しでも長く使ってもらおうなんていう意識は微塵もない。とにかく買ったらそれまで、あとは新製品が出るたびに買い換えさせることしか考えていないのだ。短期的に見て多少売り上げが落ちようとも、長期的に熱烈なファンを育てていこうという意識がこの会社にはまるで欠如している。「客質」という言葉があるが、ちょっと風向きが変わればすぐ他社に浮気してしまう浮動ユーザーより、何があろうとそのメーカーにこだわって支持してくれる固定ユーザーの方が企業にとってはありがたい存在であることをオリンパスは何もわかっちゃいない。

ところでデジタルカメラを構成する要素には大きく分けて三つある。一つはセンサーやシャッターなどのハードウェア。こればっかりはカメラを買い換えない限りどうにもならない。特にセンサーは画質を左右するから、古い機種はどうやっても新しい機種には敵わない。その差が大きくなったとき、買い換えの対象となる。二つ目は画像処理エンジンなどのファームウェア。厳密に言うと専用のチップでやらせているからハードウェアに該当するが、その実体はソフトウェアと等価である。もちろんメニューなどの操作系もファームウェアに含まれる。これらのファームウェアも新製品が出るたびに改良されていくわけで、ファームウェアさえ書き換えれば新機種と同等の機能が得られる場合も多い。しかし実際にファームウェアのアップデートが行われるのは原則として現行機種の間に限られるだろう。なぜならファームウェアの開発というのは非常にコストがかかるからだ。機種が異なればCPUや周辺回路も異なるため、そのソフト開発ができる人間は限られてくる。ゆえにどうしても高コストになるのだ。ソフト屋だからその辺の事情はわかる。だからいつまでもファームウェアをアップデートすることまでは求めない。新しい機能が欲しければ新製品を買ってもらう、それでいいだろう。そして三つ目がRAW現像ソフトだ。デジタルカメラはここまでをカメラの一部と考えるべきだ。なぜならRAWファイルさえ残っていれば現像ソフト次第でいくらでも絵作りを変えることは可能だからだ。そしてRAWファイルというのはセンサーが出力した信号をそのまま記録した純然たるデータである。そこにハードウェアが絡む要素は一切なく、完全にPCのCPUの上でだけ処理される。ゆえに新しいアートフィルターだろうが、新しい画像処理エンジンだろうが、新旧の差別なく一律に適用することが可能だ。むしろ機種によって使い分ける方がコストがかかると言える。だからソフトウェアでできることはすべてのユーザーに平等に開放すべきなのだ。そこまでしてもRAW現像をやりたくないユーザーはやはり新製品を買ってくれるのだから、メーカーが実質的に何か損をするわけではない。それどころかユーザーの信頼感が得られて、将来的に固定ファンが増えることにつながる。

オリンパスはそこを完全に勘違いしているのだ。既存ユーザーを粗末にすればするほどユーザーの心は離れて、「それじゃ他社へ行くわ!」ってことになる。10年先はおろか、3年後の展望ですら見通せない会社、それがオリンパス。すべては場当たり、思いつき、出たとこ任せ。こんな会社、もう終わっている。

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