センサーサイズとダイナミックレンジ

投稿日:2013年11月12日 更新日:

デジタルカメラ

デジタルカメラの性能でよく解像度や高感度ノイズばかりが問題にされるが、それってそんなに重要なものだろうか? 少なくとも現在のデジタル一眼レフの水準であれば、A4~A3プリントのレベルではまったく区別は付かないはずだ。それよりも発色性と階調性(言い換えればダイナミックレンジ)の方がより重要と考える。なぜならそれらはどんなに縮小しても必ず見えてしまうからだ。発色性の問題は横へ置いておくとして、ダイナミックレンジの狭い白飛びした画像はいかにも安っぽく見えてしまう。コンデジと一眼レフの「格の違い」を最も感じるのはまさにこの部分である。

ダイナミックレンジを左右するのは主に1画素あたりのセンサーサイズだから、小さなセンサーに一眼レフ並みの画素数を詰め込んだコンデジはどうしても分が悪くなる。それでは一眼レフで使われているフォーサーズ、APS-C、135の違いはどうだろうか? まあ結論から言えば画素サイズが最も大きい135の圧勝は間違いないだろう。だからこそ135を欲しがるカメラマンが多いのも頷ける。一方でOM-D E-M5の登場以降、マイクロフォーサーズの高感度耐性やダイナミックレンジは飛躍的に向上したと言われており、ようやくAPS-Cに肩を並べられるようになった。ここでよく槍玉に挙げられるのが、マイクロフォーサーズはAPS-Cを追い越したとか、135にも匹敵するという議論である。実際、カメラ雑誌やレビューサイトにはそういうことを書いているライターも見受けられる。問題はそういう意見を鵜呑みにして、「それじゃこれからはマイクロフォーサーズの時代だな。よしE-M1を買おう!」ってことになっても良いのか?ということである。

こうした誤解が起こる根本原因は「自分の目で確かめていない」ことであり、それなら自分で確かめてみるのが一番手っ取り早い。またこうした議論で意外と見落とされているのは、JPEG画質だけで判断していることが多いという事実である。特にE-P3以降のオリンパス機の場合、ノイズリダクションがギンギンに効いているから見かけ上ノイズが少なく見える傾向がある。それをもってISO6400も実用範囲だから135にも匹敵するというのはあまりにも早計だ。こういう比較ではできるだけ同一条件で撮影されたRAWを用い、ノイズリダクションをかけない「素」の状態で評価しないと意味がない。

ダイナミックレンジを比較する場合、特に重要となるのは暗部のノイズだ。デジタルカメラはもともと露出オーバーに弱いから、できるだけ白飛びが起きないように露出を抑えながら、現像時にシャドウを持ち上げてダイナミックレンジを稼ぐという手法がよく用いられる。その際、シャドウを大幅に持ち上げてもノイズが少ないほどダイナミックレンジを稼げることになる。これは言い換えればシャドウのみ増感することと等価だから、結局は高感度ノイズの評価とほぼ同じになる。

代表機種としてOLYMPUS E-M5とPENTAX K-50を選び、PHOTOGRAPHY BLOGからRAWファイルをダウンロードしてLightroomで現像した。ISO感度の比較で用いられている本棚の画像がそれである。いずれも同じ1600万画素だから比較には好都合だ。もちろんノイズリダクションはLightroomデフォルトのカラーノイズ補正25、輝度ノイズ補正0とした。その際、シャドウを2EV持ち上げることを想定し、露出補正を+2EVにしてノイズ感を比較してみた。

その結果、同じ感度であればK-50の方がノイズの粒が細かく、明らかにノイズ感は少ない。おおよそE-M5と1段近い差があるように思える。やはりセンサーサイズは正直なのだ。ソニーセンサーでいくら良くなったと言ってもしょせんセンサーサイズの差は超えられない。E-M5が高感度に強いと言われるのは、それよりも画像処理エンジンでのノイズのごまかし方が上手いということだろう。実際、E-M5の絵はISO1600以上になると輪郭が油絵のように滲んでくる現象がはっきりと見られ、ベタッとした印象になってくる。そんなのに騙されちゃいけない。まだ信じられないという方は、RAWをダウンロードして自分で試してみるのが一番だ。Lightroom5の体験版なら1ヶ月無料で使える。

上のテストは著作権の関係上ここでは載せられないけれども、自分の画像でも同じようなことをやってみた。一つはD7000。すでに手元になくてもまだまだネタにさせていただく(笑)。もう一つはE-PL2。ただしこっちはしょぼいパナセンサーだからD7000に負けるのは初めからわかっている。まあそれでもE-P3以前のマイクロフォーサーズとAPS-Cとではこのくらい差があったという参考にはなるだろう。

フォーサーズ/マイクロフォーサーズは白飛びに弱いと言われてきたが、D7000を使ってみて気づいたのはハイライト側の描写にはそれほど差はないという印象である。D7000でも逆光条件では空が真っ白に飛ぶのは同じ。おそらくオリンパス機の基準感度がISO200になって以来、白飛びにはかなり強くなっていると思われる。これは1段アンダーで撮ってシャドウを持ち上げるのと等価だから、基準感度がISO100のAPS-C機とほぼ同等になると考えられるのだ。したがって、ダイナミックレンジを決定づけるのはやはりシャドウ側の増感特性によるところが大きい。

以下、D7000とE-PL2で撮影したRAW画像をノーマルとシャドウ補正+100(Lightroomの最大値)で現像した結果を示す。同じ条件で比較できないのはすでに手元にないからで仕方がない。

20130710_122654-1
D7000 ISO100 ノーマル現像

20130710_122654-2
D7000 ISO100 シャドウ+100

20130710_122654-2-part
滝の左側を等倍クロップしたもの。ノーマル現像では見えなかった岩や苔のディテールがはっきり見えるようになり、しかもノイズ感はまったくと言っていいほどない。

20130720_103606-1
E-PL2 ISO200 ノーマル現像

20130720_103606-2
E-PL2 ISO200 シャドウ+100

20130720_103606-2-part
左端にある石灯籠を等倍クロップしたもの。ノーマル現像だとほとんど潰れていたが、ここまではっきり見えるようになる。ただしD7000に比べてノイズはかなり目立つ。

どうだろう? ソニーセンサーとパナセンサーだから初めから比較にもならないが、E-PL2は思ったよりマシという気もする。このくらいなら少し輝度ノイズ補正を効かせてやれば使えるレベルじゃないか? まあソニーセンサーのE-M5やE-M1ならこれよりかなり良いのは事実だろう。それでもAPS-Cを超えることはできないのもまた事実。

パナセンサー機限定ということになるかもしれないが、マイクロフォーサーズとAPS-Cでは撮り方を少し変える必要がある。まずAPS-Cでは一般に言われるように、ハイライト側に露出を合わせてシャドウは黒く潰し、現像時にシャドウを大きく持ち上げるのがセオリー。でもそれをマイクロフォーサーズでやっちゃうとシャドウがノイズまみれになるから、少しやり方を変える。マイクロフォーサーズでは逆に白飛びしないギリギリの範囲でできるだけ露出をオーバーにしておき、現像時にハイライトを切り詰めるという手法をとる。露出を下げる分にはノイズは出ないからだ。これはフィルムで言えばちょうどポジとネガの関係に似ている。マイクロフォーサーズではシャドウ基準で撮った方が良い結果が得られる。オリンパスのマイクロフォーサーズ機ではINFOボタンを何回か押すとハイライト/シャドウ警告表示になるので、それを参考に露出を決めるとよい。白飛びする部分がオレンジ色に表示されるが、RAWでは少々のオーバーは救済できるので、少しオレンジが出る程度まで露出を上げるとちょうどいい感じになる。

ちょっと話が横道にそれたが、いくらソニーセンサーでダイナミックレンジが良くなったからといって、マイクロフォーサーズがAPS-Cを超えたり、ましてや135に匹敵するものではないということを言いたかったのだ。やはりセンサーサイズなりの性能差は必ず出てくるものだ。そう考えるとマイクロフォーサーズには割高感がある。偶然かもしれないが現在E-M1、K-3、α7がどれも実売13万円前後で横並びになっている。この中で一番コスパが低いのはやはりE-M1だろう。いくらフラッグシップ機だと偉そうにしても、しょせんAPS-Cには勝てないのだ。さすがはボッタクリの元祖オリンパス(笑)。もしタダでくれるとしたら、自分は迷わずK-3をもらう(笑)。α7は135フルサイズ機としては安価だが、レンズの選択肢が少なく高価であるため、トータルでは結局割高になる。現状で最もコスパが高いのはやはりAPS-CのK-3ということになるだろう。

要はG6、あるいはE-M5が投げ売りになってもマイクロフォーサーズは買わないよっていうこと。どうせE-PL2と大して変わらないんだから・・。K-50は安くても画質はE-M1をも上回る。だから次のカメラはK-50一筋で揺るぎない、そういう結論を導き出したかったのだ。(爆)

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