稜線の廃トラック

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廃景


2012年10月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II

先日、紀伊半島の山奥へ登山に行った際に発見した廃トラック。それ自体は別に珍しくないのだが、その場所がきわめて特殊なのだ。ここは急な山道を少なくとも30分歩いてようやく稜線にたどり着いたところ、標高1300mの山の上である。通常、登山者以外通ることのない場所で、もちろん車で入れる場所ではない。本来ならそこにあるはずのないものにいきなり出くわしたら誰もが度肝を抜かれることだろう。


実はここはかつて林道が通っていて、木材の運搬などに使われていたらしい。しかしその林道もやがて廃道となり、このトラックだけが取り残されてしまった格好だ。現在ここへ来るには徒歩しか手段がない。ドア横の銘板から、形式は「マツダ E2500」であることがわかる。調べてみると、昭和40年代頃のものらしい。


2012年10月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II

こうやって自然の中に溶け込んでいるのが不思議な光景である。


2012年10月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II

錆び具合が見事である。バッテリーはほぼ完璧な形で残っている。


2012年10月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II

こうやって40年以上もたたずんできたのだろうか?


2012年10月 E-PL2 / M.ZUIKO Digital 14-42mmF3.5-5.6II

壊れて閉まらないドアを開けて、運転席を覗き込んだとき息を呑んだ。何てシュールな光景なんだ。これは芸術だ。美しすぎる・・。よく見ると、キーも挿さったまま。

廃なものに惹かれるのは自然に還りゆく滅びの姿が美しいから。でも意図的に人間に壊されたものは美しくない。ここは最低30分歩かなければたどり着けない山の上だから、用のない人間が来ることはない。それが幸いして心ない人間に破壊されたり略奪されることなく、40年間もほぼ原形をとどめたままで残っていたのだろう。

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